住宅価格の高騰や購入年齢の上昇を背景に、定年後も住宅ローンが残るケースは珍しくなくなっています。しかし「退職金で完済すれば大丈夫」と考えて資金計画を立てていても、長い返済期間のなかでは思いもよらない出来事が起こることも……。夫婦の事例をもとに、住宅ローンを組む際に押さえておきたいポイントを辻本剛士CFPが解説します。
3LDKのマイホームを手放した〈年金月20万円〉70歳夫婦。「家賃5万円の公営団地」を終の棲家に選んだワケ【CFPの助言】
親の介護、業績悪化…“想定外”が重なり「退職金で完済」計画が崩壊
住宅購入から数年後、アキコさんがパートを辞めて専業主婦になり、世帯収入が100万円減少。また、住んでから10年ほど経った50代前半には給湯器が故障し、水回りの設備も交換時期を迎え、突発的にまとまった支出が発生しました。加えて、80代の親の介護が必要になり、不足分をタツヤさんが負担することに。
修繕費や介護費などの支出が増えたことで思うように資産形成は進まず、タツヤさんが65歳で定年を迎えたころ、1,000万円あった貯蓄は300万円まで減少していました。
「貯蓄はあまりできなかったけれど、退職金で住宅ローンは完済できるだろう」と考えていたタツヤさん。しかし、その期待すら裏切られることになります。
なんと、勤務先が業績悪化により民事再生法を申請し、退職金規程が変更されたことで、約2,000万円を見込んでいた退職金は約1,000万円まで減額されたのです。
さらに、マンションの管理費と修繕積立金も合わせて月2万円増額。夫婦で月20万円の年金を受給し始めましたが、住居費や生活費を合わせると毎月約16万円の赤字となり、このままでは7~8年で資金が底をつく計算でした。
タツヤさんは、70歳を過ぎても、住宅ローンを返済するために働き続けるしかありませんでした。
「老後は安心して暮らせると思っていたのに……」と、思い描いていた老後とのあまりの違いに言葉を失いました。
【CFPの助言】住宅ローンは数十年の付き合い…「老後の家計」まで見据えて
住宅を購入する際、多くの方が35年ローンなどの長期ローンを利用します。その一方で、現在の年収や住居費だけを基準に、返済できるか否かを判断してしまう方も少なくありません。
しかし、完済までの数十年のあいだには、さまざまなライフイベントによって、家計が大きく変化する可能性があります。
【収入が減少するケース】
・リストラや転職による収入減少
・病気やケガによる休職・退職
・退職金の減額
・配偶者の退職や働き方の変更
【支出が増加するケース】
・子どもの教育費
・住宅設備の修繕やリフォーム
・管理費・修繕積立金の値上げ(マンションの場合)
・親の介護費用
住宅金融支援機構の調査によると、住宅ローン利用者の平均年齢は43.3歳と年々上昇しています。そのため、35年ローンを利用した場合、完済時の年齢が70代後半となるケースも珍しくありません。
住宅ローンを組む時点では現役世代で収入が安定していても、定年後は年金が主な収入源となります。そのため、定年後も住宅ローンが残る場合は、年金収入に対する住宅ローンの返済負担が大きくなり、家計を圧迫するおそれがあるため注意が必要です。
