郊外戸建てから駅近マンションへの「住み替え」を決意した年金月20万円・70歳夫婦

テツヤさん(仮名・70歳)は、妻のカナエさん(仮名・70歳)と郊外の戸建住宅に二人で暮らしています。40歳になる息子・トモヤさん(仮名)はすでに独立しており、現在は夫婦二人、穏やかな老後生活を送っています。

年金収入が月20万円あるほか、貯蓄も約4,000万円あり、生活に困ることはありません。しかし、最近は年齢とともに身体の衰えを感じるようになっていました。足腰が弱くなり、自宅の階段の上り下りがつらくなってきたのです。

また、自宅は郊外にあるため、生活には車が欠かせません。スーパーマーケットや薬局、病院、銀行へ行くにも車が必須で、年齢から運転そのものにも不安を感じ始めていました。

そんな悩みを帰省したトモヤさんに相談したところ、次のような提案を受けました。

「それなら、駅近のマンションへ住み替えたらどう?」

トモヤさんは、徒歩で買い物や通院ができる環境なら、将来も安心して暮らせるのではないかと考えたのです。

夫婦はさっそく物件探しを始め、やがて駅から徒歩3分の築30年・3,000万円の中古マンションを見つけました。エレベーターが完備されており、室内もバリアフリー仕様にリフォームされています。「ここなら安心して暮らせそうだ」と、二人は購入を決意しました。

現在の戸建住宅は1,000万円で売却し、その資金をマンション購入費に充て、不足分は貯蓄から賄いました。諸費用を支払ったあとでも、手元には1,500万円ほどの預貯金が残ります。管理費は月1万円、修繕積立金は月2万円。年金月20万円では生活費を含めると若干の赤字になりますが、貯金を取り崩せばなんとか賄えそうです。

「こんなはずじゃなかった…」70歳夫婦を次々と襲った“想定外の事態”

「これで安心して過ごせる」

そう期待して始まったマンションでの新生活でしたが、テツヤさんは入居後すぐに、その考えが甘かったことを思い知らされました。

まず起こったのは、給湯器の故障です。点検を依頼すると、設置から年数が経過していることから修理は難しく、交換が必要とのこと。これで約30万円の出費です。さらに数ヵ月後にはディスポーザーも故障し、こちらも交換費用が発生しました。

たしかに室内はリフォーム済みで、クロスやフローリングは真新しいものに張り替えられ、キッチンやトイレも新品。しかし、築30年のマンションだけに、すべての設備が交換されていたわけではなかったのです。

また、設備以外にも、予想外の出来事がありました。上階から響く足音や椅子を引く音、深夜の排水音に加え、駅前という立地から電車の通過音が気になるようになったのです。内見時には気づかなかったものの、自宅で過ごす時間が長くなるにつれ、こうしたマンション特有の音にストレスを感じるようになっていきます。

そして、決定打となったのが修繕積立金の値上げです。管理組合から届いた通知には、これまで月2万円だった修繕積立金を3万5,000円へ引き上げると記載されていました。

「そんなに上がるのか……」

ただでさえ赤字な家計に、設備の交換費用や修繕積立金の値上げが重なり、預貯金は想定以上のペースで減っていきます。さらに「築30年のマンションだから、今後も設備の故障が続くのではないか」という不安も募り、テツヤさんは通帳残高を見るたびに老後資金への不安を募らせるようになりました。

“安住の地”を求めて選んだ駅近マンション。しかし、入居からわずか半年で、夫婦は「前の家のほうがよかったかもしれない」と後悔するようになっていました。