「マイホームでこのまま暮らす」ことだけを基準にしない

老後の住まいを考える際は、持ち家か賃貸かといった「かたち」から入るのではなく、暮らし全体が無理なく続くかを見ることが大切です。

必要な介護や医療を選べるか。車を運転できなくなっても生活できるか。夫婦のどちらかが一人になっても家を維持できるか。住み替えや家財整理を自分たちだけで進められるか。難しい場合、誰に相談ができるか。住まいは、介護や家族関係、家計、地域のサービス、将来の施設入居まで含めて考える必要があります。

家は、財産のなかで最も大きく、最も目に入りやすい存在です。だからこそ私たちは、老後の安心を考えるとき、つい「家でこのまま暮らす」という家を維持する視点に引っ張られてしまいがちです。しかし、今回の危機でAさん夫妻の暮らしを支えたのは、持ち家ではありませんでした。困ったときに力を貸してくれる家族や事情を相談できる相手、周囲を頼り、これからのために自分たちも行動しようという自身の決断。暮らしを本当に支えているのは、こうした埋もれがちな財産のほうなのかもしれません。

家を手放すことは、これまでの人生を否定するものではありません。いわば、暮らしの変化を取り込んだ住み方のアップデートです。老後の安心とは、家を持ち続けることだけではなく、暮らしの変化に応じて、必要な助けや住まいを選び直せることなのではないでしょうか。

〈参考〉

一般職業紹介状況(職業安定業務統計)第21表

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450222&tstat=000001020327&cycle=1&tclass1=000001244436&tclass2val=0

総務省 令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果

https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/pdf/kihon_gaiyou.pdf

内田 英子
FPオフィスツクル代表