年金生活が始まったというのに、重すぎる住宅ローンで老後が不安な日々。「退職金を増やして完済したい」――そんな思いが、人生を大きく変えてしまったとしたら? 当時65歳の男性がはまった泥沼の事例から、老後資金を「増やす」ことより「守る」ことが大切な理由を、FPの三原由紀氏の解説とともに見ていきましょう。
「家を失った。でも、これでよかった」…購入から21年、“住宅ローン完済”を断念した66歳男性がポツリ。移り住んだ〈家賃3万7,000円・都営住宅〉の一室で【FPが解説】
残金わずか「250万円」――金融機関に相談をした結果
長男の勧めで、佐々木さんは警察や消費生活センター、送金先の金融機関に相談しました。しかし、送金した約1,900万円が戻る見込みはありませんでした。
「なんてことだ……」
手元に残ったのは、わずかに約250万円。月約16万円に及ぶ住居関連支出を捻出することは難しく、住宅ローンの返済猶予や条件変更の相談をすることになりました。
毎月の返済額を少なくして返済期間を延ばすという方法は、佐々木さんの年齢的に厳しいという結果。もう1つ提案されたのが、高齢者向け住宅ローン「リ・バース60」という選択肢でした。
これは、通常のローンのように元金と利息を毎月返すのではなく、生きている間は利息のみを支払い、本人が亡くなった後に自宅を売却して元金を一括清算するという制度。利息を払い続けている限り、自分の家に住み続けられることが大きなメリットです。
しかし、本当に自宅を残すことが最善なのか――。長男の勧めもあり、佐々木さんは住宅と家計に詳しいファイナンシャル・プランナー(FP)へ相談することにしました。
FPの助言「リ・バース60は有効な制度です。でも…」
「大変でしたね。そもそも年金暮らしになって『住宅費が重すぎる』と感じた時点で、売却などを検討できたらよかったのですが。ただ、失ったものを嘆くよりも、これからのことを考えていきましょう」
佐々木さんの話を聞いたFPは、金融機関が試算したリ・バース60の結果を見ながら、こう続けました。
「リ・バース60は毎月の返済負担を軽くできる有効な制度です。ただ、管理費や修繕積立金、固定資産税などの負担は続きますし、金利が上がれば利息の負担も増えていきます」
実際に試算すると、リ・バース60を利用した場合の住居費は月々約9万円。一方、公営住宅なら約3万7,000円です。この差は年間で60万円以上、老後20年と考えれば1,200万円以上にもなります。退職金の大半を失ったばかりの今は、家を残すことよりも、住居費全体を下げて生活に余裕を持たせる方が合理的だといえるでしょう。
「佐々木さんの場合は、そうした視点でこれからの生活を考えてみてはどうですか?」
最後にFPはそう言いました。