お金を増やせるはずが…息子に「300万円貸してくれ」

きっかけは「初心者でも資産運用」「プロが銘柄を教えます」というSNS広告でした。

「自分でもお金を増やせるのではないか、でも、そんなうまい話があるか?」

半信半疑でLINEグループに参加し、最初は試しに数万円だけ。確かに利益が出て、それを引き出すこともできました。今度は数十万円。画面上の数字は日を追うごとに増加します。「本当に増えている」――そう信じ込んだ佐々木さんは、その後も勧められるまま送金を重ね、気付けば総額は約1,900万円にのぼっていました。

しかしある日、「利益を引き出すには、あと300万円の保証金が必要です」というメッセージが届きます。焦った佐々木さんは、すがるような思いで長男へ電話をかけました。

「300万円だけ貸してくれないか……」

長男は、何かを感じ取ったのでしょう。自分の父は、そんなことをお願いするような人ではないと知っていたからです。夜中にも関わらず佐々木さんの元に駆け付けた長男は、送金履歴を確認。佐々木さんのスマートフォンに残るLINEのやり取りを見た瞬間、静かに言いました。

「父さん、これは投資じゃない。詐欺だよ」

警察庁によると、2025年のSNS型投資詐欺の認知件数は9,523件、被害額は約1,288億円に上り、いずれも過去最多となりました(※)。利益が出ているように見せかけ、追加送金を繰り返させる手口が特徴です。

もし入金をする前に、「これどう思う?」と長男に聞けていたら、その場であっさり詐欺だと言われ、被害を回避できていたかもしれません。しかし、普段は別々に暮らす長男や長女と、そんな会話をするタイミングはありませんでした。妻を亡くし、退職後は人と会う機会もほとんどなくなったなかで、佐々木さんを止める人は、いなかったのです。