「老後のお金が足りないかもしれない」。そう考えて節約を続けてきた結果、気づけば総資産は1億4,000万円を超えていました。しかし今度は、「自分亡き後、このお金をどう残せばいいのか」という新たな悩みが生まれます。72歳男性が直面している、資産形成の"その先"にある意外な老後の課題とは? ファイナンシャルプランナーの青山創星氏が詳しく解説します。
「こんなに増えて、どうすりゃいいんだ」…食費月3万円で慎ましく生きる72歳、気づけば総資産「1億4,000万円超」に。隠れ富裕層が抱える“切実な悩み”【FPの解説】
遺言書1通で、お金の行き先を変えられる…「新たな選択肢」
「突然降って湧いた大金は、時に人生を狂わせることもあるというでしょう? 疎遠の甥に全額は、迷いがあってね」
葬式や手続きなどで手間をかけるかもしれないので、ある程度の遺産を甥に残したいという気持ちは当然あります。しかし、ただ血が繋がっているというだけの理由で、全財産を彼に渡す。それでいいのだろうか?
――そう頭を悩ませていたときに、相続セミナーで出会ったファイナンシャルプランナーの永瀬さん(仮名)に、横川さんは思い切って悩みを打ち明けました。そこで聞いたのが、「遺贈寄付」という選択肢でした。
「甥御さんに残すのも一つの選択ですし、お世話になった人や団体、社会に役立てるという考え方もあります。その意思を形にする方法として『遺言書』があるんですよ」
子や親などには「遺留分」という、最低限受け取れる権利があります。しかし兄弟姉妹・甥・姪には、この遺留分がありません(民法第1042条)。つまり遺言書さえ書いておけば、例えば甥への相続をゼロにして、別の人や団体に全財産を渡すこともできるのです。
公正証書遺言の作成にかかる公証人への手数料は、今回のような財産規模で6万円台です。司法書士や行政書士への依頼費用を合わせても、数十万円程度が目安です。
「たとえば一部を甥に残して手続きの負担を減らしつつ、残りのまとまった財産をご自身が関心のある自然保護NPOや、母校の大学の奨学金制度、あるいは医療研究機関などに寄付する形も取れます」
永瀬さんのこの提案が、横川さんの心にすとんと落ちました。
「現役時代にコツコツ築いた資産に、相場や地価の上昇が重なって、気づけば自分でも想像していなかった額になっていました。自分の手で『次の世代や社会のために役立てる』と決められるなら、これまでの生活にも、これからの人生にも、新しい意味が生まれるかもしれません」
横川さんはいま、遺言書の作成に向けて動き始めているそうです。
