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母の急逝で知った15年目の真実
悲劇は突然起こります。72歳だった母は、自宅で倒れ、そのまま帰らぬ人となりました。病気らしい病気もなく、本当に突然のことだったといいます。
葬儀を終えたあと、父はほとんど話しません。実家には一人で残ることになりました。健一さんは月に一度は顔を出しようと思いましたが、仕事もあり、実際に訪ねたのはそれから約1年後でした。仏壇に線香をあげたあと、父が押し入れを開けます。
「これ、持っていけ」
段ボール箱が三つ。中には何冊もの銀行の通帳と、封筒が入っていました。通帳を見た健一さんは思わず声を失います。15年間、自分が送り続けた毎月5万円。その金額とほぼ同じ額が、毎月そのまま積み立てられていたのです。
一度も引き出された形跡はありませんでした。残高は約910万円。封筒には母の字でこう書かれていました。
「健一へ」
中には現金50万円と、一枚の便箋が入っていました。便箋には長い文章はありませんでした。
「毎月ありがとう。これはあなたのお金です。子どもたちのために使ってください」
健一さんは父を見ました。
「どういうこと?」
父は静かに答えます。
「母さんの気持ちだ」
父の言葉を受けて、健一さんは深い後悔の念に駆られました。
「私はお金を送ることで親孝行した気でいました。むしろお金を送っているのだから、それ以上のことはしなくてもいいと考えていた。お金が使われていないなら、意味ないですよね。今さらながら、仕送りを免罪符代わりにしてきた自分に、このとき気づきました」
内閣府『令和8年版高齢社会白書』によると、日本のシニアが生きがいを感じる時のトップは「子どもや孫など家族との団らんの時」で、半数以上の53.6%に上ります。親にとって一番の喜びは、毎月の5万円ではなく、息子からの「今月も送ったよ」という一本の電話だったのかもしれません。