止まらぬ物価高などを背景に、「貯蓄」や「老後資金」に不安を抱える人は多いでしょう。しかし、お金を使うことに恐怖を覚えてしまうほどとなると、話は変わってきます。高まりすぎた“倹約意識”が、親子関係に深刻な溝を生むことも……。CFPの山﨑裕佳子氏が、70歳の父親と33歳の息子の事例をもとに、行き過ぎた節約意識の危険性と漠然とした不安を解消する方法について解説します。
じぃじ、遊園地連れてって!…孫の誘いを「金のムダ」と切る〈年金月20万円・資産3,000万円〉70歳父。33歳息子が〈絶縁〉を突きつけた日【CFPの助言】
財布を一切開かない父…孫には会いたがるのに「おもてなしゼロ・外食代は息子持ち」
そんな父・ナオキさんから最近、頻繁に「帰ってこないか」という連絡がくるように。最初は反発したワタルさんでしたが、「一人になって寂しくなったんだろうか。高齢だし心配だな」と心情を察し、子どもたちを連れて月1回のペースで実家に顔を出すことにしました。
正直、自分たちのレジャー費すら削っているなかで、千葉の実家までの往復の高速代やガソリン代は、ワタルさんの家計にとって決して小さくない痛手です。それでも親孝行の一環として、多少の無理をしてでも通いました。
ところが、実家に着いても特におもてなしがあるわけではありません。食卓にはスーパーの値引きされた惣菜が並び、飲み物は水道水です。
ワタルさんが、「たまには外食にしよう」と気を利かせれば、嬉しそうに「そうだな、そうしよう」と車に乗り込むものの、会計伝票を手に取ったことは一度もありません。いつもワタルさんが全額支払います。
ナオキさんは、60歳で定年退職したあとも、契約社員として68歳まで働きました。現在は無職ですが、月20万円の年金収入のほか預貯金も3,000万円あり、一人暮らしには十分といえる資産があります。
それでも、孫に会いたがるわりには、誕生日やクリスマスのプレゼント、お年玉すら渡したことはありません。息子のワタルさんが身銭を切って孫を連れてきていることへの労いも皆無でした。
「ああ、父さんはなにも変わってないな……」
これまでの父の姿から期待はしていなかったものの、それでもモヤモヤしてしまうのでした。
「金のムダだ」孫の遊園地代を拒絶…ついに息子が突きつけた〈絶縁宣言〉
いつものように時間とお金を工面し、親孝行のために実家へ帰省していたときのことです。
テレビで実家の近くに新しいテーマパークができたことを知り、ワタルさんは子どもたちに「近くだね。じぃじに連れて行ってもらおうか?」と伝えました。
すると、子どもたちもナオキさんの前で「ヤッター! じぃじ、連れてって!」と大喜びです。ところが、それを横で聞いていたナオキさんの表情には戸惑いが浮かんでいます。
入場料を調べてみると、大人一人4,000円、子ども一人500円とのこと。4人で行けば9,000円になります。
ワタルさんには、淡い期待がありました。自分には厳しかったナオキさんも歳を取り、可愛い孫から直接おねだりされれば変わるのではないか。毎回外食代を出している自分の代わりに、たまにはチケット代くらい出して、孫を喜ばせてくれるのではないか、と。
しかし、ナオキさんの口から出たのは、「いいじゃないか、公園で。金のムダだ」という一言でした。それを聞いた瞬間、ワタルさんのなかで何かが弾けました。
自分への仕打ちは我慢できても、可愛い孫の笑顔すら数千円を惜しむのか。自分がしていた親孝行は、「タダで孫と遊べる都合の良い娯楽」でしかなかった。積もり積もった鬱憤が限界を突破したのでした。
「こっちはローンでカツカツなのに、毎月高速代と外食代を出して、父さんが会いたいっていうから無理して来てるんだぞ!? たまには孫が喜ぶようにお金を使ってくれてもいいだろ。そんなに貯めこんでどうするんだよ、ドケチすぎるだろ……」
「……必要ないものに金を使うつもりはない」
「わかった、もういいよ。父さんは家族より大事なお金と一緒に生きていったらいいんじゃない?」
ワタルさんはそう冷たく言い放ち、子どもたちを連れて帰宅。この一件以来、絶縁状態となりました。
