(※画像はイメージです/PIXTA)

梅雨、どんよりとした天気に「なんとなく調子が悪い」と感じませんか。熱があるわけでもなく、病院に行くほどではないものの、「朝から頭が重い」、「身体がだるい」、「一日中眠い」……。そんな季節の変わり目特有の不調に悩まされる方が最近増加しています。実は、こうした症状の背景には、気圧・温度・湿度などの変化が引き起こす「気象病」が隠れている可能性があります。今回は、多くの世代を悩ませる気象病の原因と、毎日の生活に取り入れやすい予防・対策について詳しく解説します。※本記事は大同生命が運営する『どうだい?』からの転載記事です。

1.梅雨になると増える「なんとなく不調」

梅雨時期に入ると、SNSなどでも「低気圧がつらい」「頭痛がひどくて動けない」といった投稿を目にする機会が増えます。気圧が下がるタイミングで体調を崩す人は想像以上に多く、とくに家事や育児、仕事に追われる働く世代の女性にその傾向が強く見られます。


さらに厄介なのは、症状が「病気・病名」として明確に認識されにくい点です。「ただの疲れだろう」「気合が足りないだけ」と自分を責めてしまったり、周囲に理解されずに一人で我慢してしまったりするケースも珍しくありません。


しかし、天候の変化が人間の身体に影響を与えることは、医学的にも少しずつメカニズムが解明されてきています。気のせいではなく、身体が環境の変化に一生懸命適応しようとしている結果として現れるサインなのです。

 

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2.「気象病」とは何か

気象病(あるいは天気痛)とは、気圧、湿度、気温などの気象条件の変化によって引き起こされる、さまざまな体調不良の総称です。


人間の身体は、外部の環境が変わっても体内の状態を一定に保とうとする働きを持っています。この調整役を担っているのが「自律神経」です。


自律神経には、身体を活発にする交感神経と、リラックスさせる副交感神経があり、これらがバランスを取りながら働いています。しかし、梅雨時期のように気圧が急激に下がったり、寒暖差が激しかったり、湿度が高くジメジメしたりする環境下では、自律神経が過剰に働いてしまい、バランスが崩れやすくなります。


とくに気圧の変化を敏感に感知しているのが、耳の奥にある「内耳(ないじ)」という器官です。内耳には気圧を感じ取るセンサーのような役割があり、気圧が急低下すると、その情報が脳に伝わります。


このとき、内耳が過敏に反応してしまうと、脳に過剰なストレス信号が送られ、交感神経が刺激されて痛みを感じやすくなったり、逆に副交感神経が優位になりすぎてだるさを引き起こしたりすると考えられています。

3.なぜ「頭痛・だるさ・眠気」が起きるのか

気象病の代表的な症状である「頭痛」「だるさ」「眠気」。それぞれどのような仕組みで起こるのかを見ていきましょう。

 

頭痛

気圧が下がると、私たちの身体にかかる外からの圧力が減るため、血管が拡張しやすくなります。脳の血管が広がると、周囲の神経(三叉神経など)が圧迫されたり刺激されたりして、ズキズキとした痛みが生じます。これが気圧低下による頭痛の主な原因です。


もともと片頭痛を持っている方は、この血管の拡張による影響をより受けやすく、気圧が低下する雨の日の前後に症状が悪化する傾向があります。

 

だるさ

だるさや倦怠感は、主に自律神経の乱れからやってきます。気圧の変化に対応しようと自律神経が働きっぱなしになることで、一種の「自律神経の疲労」状態に陥るのです。


さらに梅雨時期は湿度が高く、汗が蒸発しにくいため体内に熱や水分がこもりがちになります。東洋医学ではこれを「湿邪(しつじゃ)」と呼び、胃腸の働きを低下させたり、身体を重だるくさせたりする原因と考えられています。

 

眠気

しっかり睡眠時間を確保しているのに眠い場合、日照不足が関係しているかもしれません。雨や曇りの日が続くと、日光を浴びる機会が減ります。人間は朝の光を浴びることで体内時計をリセットし、夜になると睡眠ホルモンであるメラトニンが分泌される仕組みになっています。日照時間が短いとこのリズムが崩れ、日中でもすっきり目覚められず、強い眠気を感じやすくなるのです。

 

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4.気象病になりやすい人の特徴

同じような天候の変化があっても、気象病になりやすい人とそうでない人がいます。次のような特徴に当てはまる方は、少し注意が必要です。

 

・片頭痛持ちの方:普段から血管の拡張による頭痛が起きやすい体質のため、気圧の影響を強く受けます。

 

・睡眠不足・ストレスが多い方:疲労やストレスが蓄積していると、自律神経の調整機能がすでに低下しているため、少しの気象変化でバランスを崩しやすくなります。

 

・更年期世代の方:女性ホルモンの変動によって自律神経が揺らぎやすい時期であり、気象の影響も重なって不調を感じやすくなります。

 

・冷え性・低血圧の方:血流が滞りがちで、体温調節がうまくできないため、寒暖差や湿度の影響を受けやすいです。

 

・デスクワーク中心の生活:長時間同じ姿勢でいることで首や肩の筋肉が緊張し、血流が悪化。内耳周辺の血行不良にもつながり、気象病の引き金になり得ます。

5.今日からできる予防・対策

気象病を完全に防ぐことは難しいかもしれませんが、日常生活のちょっとした工夫で症状を和らげることは可能です。無理のない範囲で、以下の対策を取り入れてみてください。

 

耳まわりのマッサージ

内耳の血流を良くすることが、気象病対策の第一歩です。両耳を手で軽くつまみ、上下や横に引っ張ったり、後ろにぐるぐると回したりする「耳マッサージ」がおすすめです。痛気持ちいい程度の力で、1日数回、とくに天気が崩れそうなタイミングで行うと効果的です。

 

ゆっくり入浴する

忙しいとシャワーだけで済ませがちですが、38〜40度くらいのぬるめのお湯にゆっくり浸かることで副交感神経が優位になり、心身ともにリラックス効果が得られます。また、水圧によって全身の血流が改善し、体内にたまった余分な水分を排出してむくみを解消する手助けにもなります。適切な入浴は睡眠の質を高めるためにも重要です。

 

睡眠リズムを整え、朝日を浴びる

自律神経を整える基本は規則正しい生活です。できるだけ毎日同じ時間に起床し、カーテンを開けて部屋を明るくしましょう。たとえ曇りや雨の日でも、窓辺に立つことで体内時計をリセットするためにも必要です。

 

除湿と冷え対策

室内の湿度が60%を超えると身体の重だるさを感じやすくなります。エアコンの除湿機能などを活用し、快適な湿度(50〜60%程度)を保つようにしましょう。また、梅雨寒(つゆざむ)と呼ばれるように気温が下がる日もあるため、羽織るものやひざ掛けを用意し、首・手首・足首を冷やさない工夫も大切です。

 

軽い運動とストレッチ

デスクワークの合間に首や肩を回したり、ふくらはぎを伸ばしたりするだけでも、血流が改善します。激しい運動は必要ありません。ラジオ体操やウォーキングなど、心地よいと感じる程度の運動を習慣にしましょう。

 

ストレスを溜めない・漢方の活用

完璧を目指さず、「雨の日は調子が出なくて当たり前」と自分を許す心の余裕も大切です。どうしてもつらい場合は、漢方薬を取り入れるのも一つの選択肢です。水分代謝を促す「五苓散(ごれいさん)」などは天候や気圧の変化に伴う頭痛やめまいの症状に対して処方される代表的な漢方薬の一つです。ただし、体質によって合う薬は異なるため、服用を検討する場合は医師や薬剤師に相談してください。

6.専門家からのアドバイス

気象病の症状は、ご自身の体質やその時々の疲労度によって大きく変化します。『たかが天気』と無理を重ねると、自律神経の乱れが慢性化して日常生活に影響が出ます。痛み止めを手放せなかったり、めまいや吐き気を伴ったり、日常生活に支障をきたすほど症状が重い場合は、我慢せずに内科や頭痛外来、漢方外来などを受診することをおすすめします。

7.まとめ

梅雨時期の「頭痛・だるさ・眠気」は、決してあなたの怠慢ではありません。気圧や湿度といった避けられない自然環境の変化に対して、身体が必死に対応しようとしている症状です。


季節による不調を「仕方ない」と諦めて我慢しすぎるのではなく、耳マッサージやゆっくりとした入浴、睡眠環境の改善など、自分を労わるセルフケアを少しずつ取り入れてみてください。


それでも改善しないときや不安なときは、医療機関に相談して適切な対応をすることも大切です。ご自身の身体のペースに寄り添い、我慢をせず、うっとうしい梅雨の季節を少しでも心地よく乗り切りましょう。

 

 

武井 智昭
高座渋谷つばさクリニック院長
小児科医・内科医・アレルギー科医

 

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※本記事は大同生命が運営する『どうだい?』からの転載記事です。