長年連れ添った夫を見送り、ひとりの老後を迎えたとき、多くの人が頼りにするのが子どもの存在です。しかし、「家族だから大丈夫」「この子なら安心」そう信じて通帳やキャッシュカードを預けた結果、思いもよらない事態に直面するケースもあります。家族だからこそ起こりやすく、周囲にも相談しづらい「身内によるお金のトラブル」。高齢者の財産を守るために知っておきたい対策について、事例とともにCFPの松田聡子氏が解説します。
「家族だから、信じていたのに」…優しい息子に託したキャッシュカード。通帳から忽然と消えた“貯金500万円”に79歳母、愕然【CFPの助言】
FPからのアドバイス:事後の解決より「事前の備え」が重要
家族による財産トラブルは「起きてから取り戻すのが難しい」という特性があります。だからこそ、元気なうちに備えることが最大の防衛策になります。
まず検討したいのが、社会福祉協議会が提供する「日常生活自立支援事業」(※2)です。判断能力はあるが、一人での手続きや管理に不安を感じる方を対象としており、日常的な預金の出し入れや公共料金の支払い代行、通帳・印鑑の預かりサービスまで利用できます。
担当するのは専門員と生活支援員で、費用は各地の社会福祉協議会によって異なりますが、訪問1回あたり平均1,200円と比較的安価です。家族ではなく公的な第三者が関与することで、お金の動きを透明化できます。
また、金融機関が提供する「認知症対応型信託」などの高齢者向けサービスも選択肢のひとつです。サービスの内容や条件は金融機関によって異なりますが、資産の管理を信託に移し、引き出しに条件を設けることで、第三者による無断使用を防止できます。まずはメインバンクに「高齢者向けの資産管理サービス」について問い合わせてみるとよいでしょう。
さらに資産規模や状況によっては、家族信託や任意後見制度を活用する方法もあります。ただし、成年後見は継続的な費用がかかるケースがあり、家族信託は適切な受託者がいないと成立しません。自分の状況に合ったやり方を選ぶことが大切です。
どの手段が合っているかを判断するための相談窓口として、まず地域包括支援センター(※3)を訪ねるとよいでしょう。財産管理の問題だけでなく、介護や生活全般の不安についても、専門の職員が一緒に考えてくれます。全国どこにでも設置されており、費用もかかりません。
いずれの手段においても、共通して強調したいのは「認知症になる前に動くこと」です。判断能力が低下してからでは、ご自身の意思に基づいた手続きが難しくなり、選べる手段が大きく限られてしまいます。
家族に対する「信頼しているから大丈夫」という思いは自然なものです。しかし、だからこそ透明性のある仕組みをつくっておくことが、家族への信頼を守ることにもつながります。大切な老後の資産を守るため、ぜひ元気なうちに一歩を踏み出しましょう。
(※1)令和6年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等 に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001658155.pdf
(※2)厚生労働省 日常生活自立支援事業 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/chiiki-fukusi-yougo/index.html
(※3)地域包括支援センターについて https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001671185.pdf
松田聡子
CFP®
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