退職金と預金を合わせた5,300万円の資産を元手に、入居一時金2,000万円の「高級老人ホーム」へ入居したユミコさん(仮名・68歳)。「これで一生安泰」と快適な老後を夢見ていたものの、わずか1年半で自主退去をすることに。閉鎖空間特有の「ドロドロした人間関係」に絶望し、安い賃貸マンションへ逆戻りした事例をもとに、老人ホーム選びの落とし穴と回避策をCFPの山﨑裕佳子氏が解説します。
こんなところ、もう1日もいたくない…「一時入居金2,000万円」を払った〈年金月23万円〉68歳女性の後悔。わずか1年半で「地獄の高級老人ホーム」から逃げ出したワケ【CFPの助言】
「もうこんなところ、1日もいたくない…」わずか1年半で退去したワケ
栄養バランスの考えられた豪華な三食の食事は、共有スペースのリビングダイニングで他の入居者と一緒に摂ることになっています。
入居間もないある日のこと、18:30に夕食のためにダイニングへ向かい、席に座ろうとすると、斜め後ろからふいに「そこは、〇〇さんの席なの。あなたは、あちらへどうぞ」と、隅っこの席をすすめられました。
「席が決まっているのかな」と思い、その場では「すみません……」と謝って移動したのですが、後で職員に聞けば特に決まってはいないとのこと。
「変わった人もいるもんだな」とそのときはやり過ごしたのですが、その後、次々と想定外のことが起こったのです。
外出自由なホームとはいえ、高齢になればホームで過ごす時間が長くなります。周りを見渡すと70代後半から80代の人が多いようでした。夫婦で入居している人もいます。
入居後ほどなくして、ユミコさんは閉鎖空間特有の「ドロドロした人間関係」を垣間見るようになったのです。常駐のスタッフも見て見ぬふりをしているようで、そのうちにユミコさんは共有スペースで他の入居者に会うのが憂鬱になってしまったのです。
そのため、気がつけば自室にこもることが多くなっていきました。せっかくの豪華な共有スペースを堪能することができなくなっていました。
すると、ユミコさんの「素っ気ない態度」が他の入居者の気に障ったのかもしれません。あるとき、古株の入居者がユミコさんの陰口を話していることを知ったのです。陰口の内容は本当にくだらないものでしたが、当然いい気持ちはしません。
「もうこんなところ、1日もいたくない……」
そんなことが続いた末、とうとう精神的に我慢の限界に達したユミコさんは、自主退去を決意したのです。入居からわずか1年半でした。
有料老人ホームの入居一時金には、一般的に「初期償却」と「均等償却」のルールがあり、短期間で退去すると償却負担が大きくなります。
ユミコさんの場合、2,000万円の入居一時金のうち返還されたのは1,400万円でした。
結局のところ、現在は賃貸マンションでの生活に逆戻りです。ただ、1年半の間に預金を600万円減らしてしまった心理的な負担もあり、以前の賃貸より安い賃貸マンションに暮らしています。将来への不安は増すばかりです。