「衝撃の遺産額」

通帳に印字されていた最終残高は、父親の暮らしぶりからは想像もつかない「100万円未満」の額でした。

「えっ……いやいや、なにかの間違いだろ。遺産がこれだけのはずがない」

頭の中が真っ白になったマコトさんは、記帳漏れに違いないと考え、慌てて通帳を持って近くの銀行のATMへ走りました。祈るような気持ちで通帳を記帳したものの、通帳の残高は大して変わっていません。

そのまま銀行の窓口で父親の死亡手続きを行い、藁にもすがる思いで「父の預金や投資信託などは、ほかにありませんか」と行員に確認を求めました。しかし、しばらくして戻ってきた行員から告げられたのは、「当行にお預けいただいているのは、こちらの普通預金口座がすべてです」という回答でした。

「父は、車の維持費や派手な交際費で毎月かなりの額を使っていたようでした。周りから慕われていた『羽振りの良い自分』を演出するために、息子にお金を遺すことなんて考えていなかったんでしょうね。勝手に期待していた自分が悪いんですが、正直ガッカリです」

遺産相続の実態

三菱UFJ信託銀行が実施した「退職前後世代が経験した資産承継に関する実態調査(2020年)」によると、遺産額の平均額は3,273万円でした。もっとも、平均は一部の富裕層が値を大きく引き上げており、中央値は1,600万円という結果になっています。

ただ、中央値が1,600万円だからといって、安易に「自分の親もそれくらいの金額を遺してくれるはず」と考えてはいけません。この遺産額には不動産(土地・家屋)の評価額も含まれているため、現預金はさらに少ないというのが現実です。

普段の暮らしぶりや過去の経歴だけで「お金がある」と思い込み、親の遺産をあてにした老後設計をしていると、マコトさんのように“勝手に期待して勝手に失望する”事態になりかねません。

50代は、定年後の生活が現実味を帯びてくる年代です。ここで、正確に把握していない「親の遺産」をあてにするのは、あまりにもリスクが大きいでしょう。