なにが叱らない育児だ、くだらん!

「そんなもん、ただのしつけの放棄だろうが!」

静まり返るリビングに、怒号が響き渡りました。声の主は、家主のシゲノリさん(仮名/69歳)です。

シゲノリさんは数年前に定年退職を迎え、現在は月17万円ほどの年金を受給しながら一人で暮らしています。

普段は穏やかな性格で、めったに感情を表に出さないシゲノリさん。彼がそこまで激昂した相手は、他でもない、41歳の長女夫婦と、その息子である小学3年生の孫(男の子)でした。

世間では、孫の訪問を心待ちにし、目に入れても痛くないほど甘やかす祖父母の姿が定番の幸せとして描かれます。シゲノリさんもまた、当初は孫の誕生を誰よりも喜び、成長を楽しみにしていた一人でした。しかし、ここ最近の帰省時における孫の振る舞いと、それを放置する長女夫婦の態度に、限界を感じていたといいます。

「叱らない育児」を盾にする娘夫婦への違和感

「娘夫婦は、子どもの自己肯定感がどうとかで『叱らない育児』を取り入れているそうなんです。けれど、私から見れば単に甘やかして、親としての義務を放棄しているようにしか見えませんでした」

その違和感が決定的な怒りへと変わったのは、大型連休の出来事でした。

久しぶりに実家へやってきた孫は、リビングに入るなり、シゲノリさんが退職記念に同僚から贈られた大切な置物を、おもちゃ代わりに乱暴に扱い始めました。

さらに、勝手に寝室に入りベッドの上で飛び跳ねます。注意しようとしたシゲノリさんを無視して冷蔵庫に向かった孫は、シゲノリさんがこの日のために用意していたジュースを勝手に飲みはじめました。

シゲノリさんはそんな孫を見かねて「こら、もっと行儀よくしないか」と諭すように注意したそうです。しかし、横でその様子を見ていた長女はスマホの画面から目を離すこともなく、「お父さん、そうやって大人が頭ごなしに怒ると、この子の自己肯定感が下がっちゃうからやめて」と、シゲノリさんの言葉を遮ったのです。

娘婿もまた、「今どきは褒めて伸ばすのが主流ですからね」と苦笑いするだけで、わが子を止めようとはしませんでした。