相場は“多様な住人”の集合体…「金(ゴールド)価格急落」に怯える必要はない。中長期投資家がとるべき“地味に効く”戦略【専門家が解説】

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相場は“多様な住人”の集合体…「金(ゴールド)価格急落」に怯える必要はない。中長期投資家がとるべき“地味に効く”戦略【専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

インフレや地政学リスクを背景に、2025年の金(ゴールド)は史上最高値を何度も更新しました。しかし2026年に入ると、2月や3月に「金急落」のニュースが相次ぎ、弱含みの展開が続いています。とはいえ、この金価格の下落はあくまで短期要因によるもので、長期スタンスの投資家が過度に心配する必要はないと、アールトラスト・インベスターズ株式会社代表取締役の小川竜一氏はいいます。本記事では小川氏が、金価格下落の背景と、中長期投資家に求められる姿勢について解説します。株式会社コインパレスHPはこちら

目次
「金価格急落」は短期要因…金の「長期的役割」とは別物
金相場は“多様な住人”の集合体
いま、相場を支えているのは誰か
“怖いからゼロ”はもったいない…日本の金は長期に強い
短期の逆風はあっても、中長期はまだ崩れていない
中長期投資家がやるべきこと
金はまだ「バーゲンセール継続中」…動揺せず静かに買い増しを

「金価格急落」は短期要因…金の「長期的役割」とは別物

「金価格が急落した」という見出しを見ると、やはり心がざわつきますよね。特に投資を始めてまだ年数が浅いと、「いま逃げるべきなのかな」「買っていたのは間違いだったのかな」と考えてしまいやすいものです。

 

ですが、今回の下げは、まず落ち着いて背景を分けてみる必要があります。

 

米国では4月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比3.8%まで上がり、コアも2.8%に伸びました。市場では来年1月までの利上げ確率が約60%へ上昇し、米2年債利回りは5月18日に4.07%、10年債は4.61%まで上昇しています。

 

金は「金利のつかない資産」ですから、こういう局面では短期資金が売りやすくなるのです。実際、この記事を執筆中の本日5月19日のスポット金は4,565ドル前後で推移しました。

 

ここで大事なのは、金が下がったことと、金の長期的な役割がなくなったことを、同じ意味で受け取らないことです。5月18日付の日経新聞の記事でも、今回の急落は米欧機関投資家の売りが広がった面が大きい一方で、個人の地金・金貨需要や中央銀行の需要は根強い、と整理されていました。

※ 日本経済新聞「金・銀・プラチナ急落、金利高で投資妙味薄れ 米欧機関投資家売りか(2026年5月18日)

 

つまり、「市場全体が金を見放した」のではなく、短期でお金を回す人たちが、いったん利確やポジション調整を進めたとみるほうが実態に近いのです。

金相場は“多様な住人”の集合体

私は相場を考えるとき、よく「同じマンションにいろんな住人がいる」と考えます。朝5時に出勤する人もいれば、夜中まで起きている人もいます。生活リズムが違えば、ドアの開け閉めのタイミングも違いますよね。

 

相場も同じです。米商品先物取引委員会(CFTC)が公表する金先物統計には、プロデューサー、スワップディーラー、マネージドマネー、その他大口投資家、非報告筋といった複数の参加者が並んでいます。現物サイドでは、ETFを通じて売買する機関投資家、バー・コインを買う個人投資家、そして中央銀行がいます。

 

みんな同じ「金」をみていても、みている時間軸も、欲しいものも、売る理由も違うのです。

 

しかも、相場には、利益が取れれば満足する人もいます。盛り上がっているから飛び乗る人もいます。実際、ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)は2025年7〜9月期の金需要について、地政学リスクやドル安に加えて、価格上昇に乗り遅れたくないFOMOの資金流入が投資需要を押し上げたと説明しています。

 

投資需要は537トン、金ETFへの流入は222トンまで膨らみました。こういうお金は、入るときも派手ですが、出るときも速いです。ニュースの見出しをよく飾るのは、たいていこのタイプの住人です。

いま、相場を支えているのは誰か

では、いま相場を支えているのは誰でしょうか。2026年1〜3月期のデータをみると、バー・コイン需要は474トンで前年同期比42%増、中央銀行の純購入は244トンで同3%増でした。一方で、金ETF需要はプラス62トンではあるものの、前年同期の230トンからはかなり鈍化しています。

 

ここからみえるのは、勢いよく入ってきたお金が少し引いた一方で、腰の据わったお金はまだ座っているという構図です。相場の住人が減ったのではなく、短期の住人が少し静かになり、中長期の住人が部屋に残っている、そんなイメージです。

 

さらに注目したいのは、国を含む中長期投資家の動きです。WGCによると、2026年1〜3月期の中央銀行買いの244トンのうち、ポーランドが31トン、ウズベキスタンが25トン、中国人民銀行が7トンを積み増しました。加えて中国人民銀行は4月にも8トンを追加し、18ヵ月連続の買い増しです。

 

中央銀行向け調査でも、95%が今後12ヵ月で世界の中銀金保有は増えるとみています。理由として挙がったのは、危機時の強さ、分散効果、インフレヘッジ、価値保存です。これは短期の値幅取りとはまったく違う論理です。国レベルの買い手は、明日の値動きより、5年後10年後の備えで動いているのです。

“怖いからゼロ”はもったいない…日本の金は長期に強い

日本の投資家にとっても、この視点はかなり大切です。WGCの日本向け分析では、円建て金は長期で安定したリターンと強いリスク調整後パフォーマンスを示し、インフレ局面でも機能してきたとされています。

 

日本のインフレ率が2%を上回る局面では、円建て金の平均名目リターンは年率23%、実質リターンでも16%だったとされています。また、仮想の日本企業年金ポートフォリオに金を5%組み入れると、リターン改善とボラティリティ、最大ドローダウンの低下がみられました。

 

もちろんこれは過去データに基づくシミュレーションで、将来を保証するものではありません。ですが、「金は怖いからゼロ」と避けてしまうより、役割を決めて持つ資産として考える根拠にはなります。

短期の逆風はあっても、中長期はまだ崩れていない

もちろん、ここで「今日から全力で買いましょう」という話ではありません。短期の逆風はまだあります。4月の世界の金ETFフローは月間でプラスになったものの、北米では月後半にかけて高い機会費用、ドル高、金利上昇が再び重しになりました。

 

WGCは4月のCOMEX総ネットロングが前月比4%減の477トンへやや低下したとしています。ロイターも、JPモルガンが短期需要の鈍さを理由に2026年平均価格見通しを5,243ドルへ引き下げたと伝えています。

 

ただ、そのJPモルガンでさえ年後半の需要回復を見込み、年末に向けて6,000ドル方向を想定しています。UBSも最近の弱さを一時的とみて、4,400〜4,600ドルでは押し目買いを選好し、2026年後半に5,900ドル方向をみています。

 

つまり、短期は荒れるけれど、中長期はまだ崩れていない、これがいまの整理です。

中長期投資家がやるべきこと

だから、中長期投資家のやることは意外と地味です。まず、金をなんのために持つのかを決めること。インフレ対策なのか、地政学リスクへの備えなのか、株や債券と違う値動きを入れたいのか。ここが曖昧だと、少し下がるたびに心が揺れます。

 

次に、買い方を決めること。私は、こういう局面ほど一度に大きく入るより、時間を分けるほうが初心者には向いていると思います。毎月一定額でもいいですし、急落時だけ少し厚めにする方法でも構いません。

 

大切なのは、ニュースで感情が揺れたときに自分のルールに立ち戻れることです。WGCの日本向け分析でも、金は「長く持つ前提」でこそ役割が見えやすい資産だと示されています。

金はまだ「バーゲンセール継続中」…動揺せず静かに買い増しを

小川からの注意喚起として、最後にひとつだけはっきりお伝えしておきます。相場には複数の住人がいます。短期投資家、中長期投資家、投機筋、値幅だけを取りに来る人、FOMOで飛び乗る人。彼らの思惑が絡んで、価格は毎日揺れます

 

でも、中長期投資家までその揺れに合わせて右往左往する必要はありません。むしろいまは、投機家や短期筋が利確していくなかで、個人の現物需要や中央銀行のような中長期資金が下支えしている局面です。

 

私は、中長期で見るなら金はまだ「バーゲンセール継続中」と考える余地があると思っています。ただし、それは明日上がるから安いという意味ではなく、長い時間軸でみたときに、根拠を持って静かに買い増せる局面が続いているという意味です。

 

短期の大きな声に引っ張られず、自分の時間軸で、自分のルールで積み上げていきましょう。

 

 

小川 竜一

コインパレス 公式アンバサダー

アールトラスト・インベスターズ株式会社 代表取締役