親の介護をきっかけに夫婦の溝が深まり、そのまま法的な婚姻関係だけを維持し続ける「介護別居」。15年間の別居の末に「籍の維持」を突きつけられた男性の事例を通じ、熟年世代で増える長期別居の実態について見ていきます。
「死んでも別れてなるものか」別居15年、62歳妻が放った執念。〈退職金2,000万円〉72歳夫が直面する絶望、厳しい現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

破綻した後に出会ったパートナーへの攻撃

「親の介護問題がなければ、こんなことにはならなかったのかもしれません」

 

そう語るのは、都内で暮らす元会社員の高橋正雄さん(72歳・仮名)です。高橋さんは現在、15年前に妻と別居した後に出会った佐藤美智子さん(66歳・仮名)と生活しています。しかし、戸籍上の妻である葉子さん(62歳・仮名)との婚姻関係は、今も続いたままです。

 

きっかけは15年前、高橋さんの母親の介護でした。当時、高橋さんは管理職として働きながら、実家へ通って介護を続けていたと言います。しかし、介護負担をめぐって夫婦間の対立が深まり、関係は急速に悪化。高橋さんは最終的に実家へ移り住み、別居生活が始まりました。

 

「夫婦関係は、その頃にはもう壊れていた。今思えば、親の介護はきっかけのひとつでしかありませんでした」

 

別居後、夫婦の交流はほとんどなくなりました。そんななかで出会ったのが、美智子さんでした。

 

「一緒に食事をするだけで、こんなに気持ちが楽になるんだと思いました」

 

互いに支え合ううち、2人は自然と共同生活を始めるようになったと言います。転機となったのは、高橋さんの定年退職。65歳で会社を退職した高橋さんは、およそ2,000万円の退職金を受け取りました。

 

「このタイミングで、きちんと整理しようと思ったんです」

 

高橋さんは葉子さんに対し、財産分与を含めた離婚を提案しました。しかし返ってきたのは、予想外に強い拒絶でした。

 

「離婚には応じません。死んでも別れてなるものか」

 

さらに葉子さんは、美智子さんとの関係について「慰謝料請求も考えている」と話したと言います。高橋さんは困惑を隠せません。

 

「もう15年も別々に暮らしている。今さら夫婦と言われても……」