東京大学が発表した最新の「大学教育の達成度調査」の結果が、世間の抱くエリート像を覆しています。入学時に明確な目標を持つ学生は半数に満たず、社会で即座に役立つスキルの修得には消極的な自己評価を下す一方で、論理的思考力には強い自信を覗かせます。データから浮かび上がる、今どきの東大生の素顔に迫ります。
東大生の5割超が「将来の展望なし」で入学…データで判明した「今どきのエリート」意外すぎる素顔 (※写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍を乗り越えた「対面教育」への回帰と満足度の変化

学生生活の満足度という点では、2024年度の調査結果はひとつの大きな転換点を示しています。

 

新型コロナウイルス感染症の影響を色濃く受けた2021年度から2023年度にかけて、学生の満足度は停滞傾向にありました。しかし、今回の調査では「大学生活全般」に満足している学生の割合が大きく回復し、肯定的な回答は87.3%に達しました。この背景には、制限されていたキャンパスライフが本来の姿を取り戻し、学生同士や教員との直接的な交流が復活したことが深く関わっています。

 

実際に、オンライン授業と対面形式の授業を比較した設問では、すべての項目において対面形式を支持する声がオンラインを上回りました。特に「他の受講生との対話のしやすさ」については、81.8%の学生が対面形式のほうが優れていると回答しています。

 

学生たちが大学に求めているものは、単なる知識の伝達だけではありません。自由記述による回答からは、優秀な友人たちと切磋琢磨し、協同して課題に取り組む経験こそが、彼らの学びを深める最大の要因であることが示されています。

 

一方で、進学選択制度(入学時には学部や学科を固定せず、教養課程(1・2年次)で広く学んだ後に、自身の興味や成績に基づいて3年次からの進学先(学部・学科)を決定する制度)に対する苦悩も垣間見られます。

 

希望の進学先に進むために、自分の興味よりも点数を意識して履修科目を選択してしまったという不満の声も挙がっています。点数至上主義とも言えるこの制度が、本来の探究心を阻害している側面は否定できません。それでも、90.2%の学生が最終的には希望通りの進学先を決めることができたと回答しており、葛藤を抱えながらも制度の中で最善の道を探り当てる、彼らの適応力の高さも伺えます。

 

卒業後の進路については、46.0%の学生が東京大学の大学院へ進学し、33.3%が民間企業へと就職します。民間企業への就職者のうち、就職支援やキャリア支援に満足している学生は52.0%と、他の施設項目に比べて低い水準に留まっています。これは、大学側に手厚い手助けを求めるよりも、自律的に進路を切り拓こうとする姿勢の表れかもしれません。あるいは、高度な知性を備えた彼らにとって、既存のキャリア支援が必ずしも十分な刺激を提供できていない可能性も考えられます。

 

総じて、2024年度の東大生は、コロナ禍という特殊な環境から脱却し、物理的なキャンパスでの体験に高い価値を見出しています。彼らは入学時に必ずしも明確な目的意識を持っているわけではありませんが、在学中に友人に感化され、論理的思考の術を磨き、自らの責任感を自覚していきます。

 

実務的なスキルへの不安を抱えつつも、それを補って余りある思考の土台を築き上げている自負があるのでしょう。エリートとしての重圧と、一人の若者としての等身大の迷い。その両端を抱えながら、次のステージへと歩みを進めています。

 

[参考資料]

東京大学『大学教育の達成度調査』