(※写真はイメージです/PIXTA)
月5万円の「現実的な仕事」
夕食のテーブルに並んだのは、ツヤツヤの炊きたてご飯と、みずみずしい朝採れ野菜の天ぷら。トシ子さんは「これ、全部もらいもんだよ」と笑います。実はトシ子さん、近所にある地元の特産品(果物やワイン)の加工場で、週に3日、箱詰めやラベル貼りのパートタイマーとして働いていました。
70代の「無理のない就業」
内閣府「令和7年版 高齢社会白書」によれば、日本の高齢者の就業率は年々増加傾向にあります。特に70〜74歳の就業率は34.3%となっており、いまや「70代前半の3人に1人」がなんらかの形で働いている時代です。
トシ子さんのパート収入は、月に約5万円。1日4時間、近所の世間話をしながら無理なくこなせる作業です。これが年金6万円に上乗せされることで、月の自由になるお金は11万円となり、一人暮らしの地方生活としては十分な防衛資金になっていました。
近所付き合いが生む「食費ゼロ」の防衛策
さらにトシ子さんの生活を豊かにしているのが、地域での繋がりです。内閣府『令和3年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査』では、近隣住民との親しい付き合いや地域活動への参加がある高齢者ほど、生活の満足度が高く、孤独感も低いというデータが出ています。
トシ子さんはパート先やご近所の農家さんと日ごろからお裾分けをし合う関係を築いていました。「これ、形が悪いから持っていけし」と、野菜や米が日常的に届くため、トシ子さんの「実際の食費」は驚くほど低く抑えられていたのです。
最新家電を買った理由
「あの掃除機もね、自分で稼いだお金で買ったじゃんね」と、トシ子さんは誇らしげにロボット掃除機を見つめました。
「この年齢で長く元気に働くコツはね、楽できるところは機械に任せて、体力を残しちょくこと。毎日掃除機をかけるのは腰にくるずら? 浮いた時間でパートに行って、また楽しく稼げばいいじゃん」
フミヤさんは、母の圧倒的なバイタリティと、時代の変化に無理なくアジャストしたスマートな生活知恵に、ただただ脱帽するしかありませんでした。トシ子さんにとってロボット掃除機は、贅沢品ではなく、「生涯現役」で上機嫌に生き続けるための、合理的な自己投資だったようです。
親孝行の形が変わる時代
大阪へ戻る間際、フミヤさんは用意していた仕送り用の封筒を鞄にしまいました。代わりに、トシ子さんが「一度行ってみたかった」といっていた温泉旅館を予約しました。
「わりいじゃんね、フミヤ」
嬉しそうに微笑む母の顔をみて、フミヤさんは気づきました。これからの親孝行とは、無理をして毎月のお金を送ることだけではないのかもしれません。親が地域と繋がり、健康に自立して生きる姿を尊重し、その元気な背中を後ろからそっと応援すること。
「仕送りなんか気にしちょし」と言い放った70歳の母の背中は、息子が心配していたよりも、ずっと頼もしく、そして温かいものでした。
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