移住するほどではない。でも、都会を離れた場所でゆっくり過ごす時間が欲しかった——。そんな思いから65歳で二拠点生活を始めた夫婦。自然の中での時間は豊かでした。しかし年齢を重ねるにつれ、移動・寒暖差・維持管理の負担が重くなっていきます。老後の“夢の別荘”に待ち受けていた現実とは? FPの三原由紀氏が解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
「私、もう東京に帰る」と妻は去った…1,500万円で“八ヶ岳・夢のリゾート別荘”を手に入れた65歳夫婦。3年で直面した「二拠点生活」の現実【FPが解説】
“ほどよい距離感”のはずが…老後の二拠点生活に潜む盲点
定年後に「自然の中で過ごす時間を持ちたい」と考え、二拠点生活を始めるシニア世代は少なくありません。都会の便利さは手放したくない。でも、せっかく時間ができた老後だからこそ、自然の中で過ごす時間も持ちたい――。その気持ちは自然なものです。
ただ、実際には「家を2つ持つ」ということは、「生活を2つ維持する」ということでもあります。
田中さん夫婦のケースでも、別荘の年間固定費は約60万円。管理費、修繕積立金、固定資産税、光熱費の基本料金などがかかります。さらに、月1回の滞在でも、交通費や滞在中の光熱費などで年間30万円以上。つまり、“使っていなくてもお金がかかる”状態が続くのです。
また、リゾート物件には特有の難しさもあります。古い別荘地では断熱性能が低く、湿気によるカビ、配管凍結、老朽化などに悩まされるケースも。マンションタイプは管理が楽な反面、管理費や修繕積立金の負担が重くなりやすい。また、需要が都市部に比べて限られるため、将来的に売却が難しくなるケースもあります。
そして何より、高齢期は「移動」そのものが負担になっていきます。若い頃は気にならなかった長距離移動や環境の変化も、年齢を重ねるにつれ、疲労として身体に残りやすくなるからです。
厚生労働省によれば、日本人男性の健康寿命(日常生活に制限なく過ごせる期間)は72.57歳(2022年)。65歳から始まる老後は長いようでいて、「自由に動ける時間」は決して無限ではありません。
だからこそ、老後の二拠点生活では「お金が足りるか」だけでなく、「何歳までその暮らしを続けられるか」も同時に考える必要があるのです。
