移住するほどではない。でも、都会を離れた場所でゆっくり過ごす時間が欲しかった——。そんな思いから65歳で二拠点生活を始めた夫婦。自然の中での時間は豊かでした。しかし年齢を重ねるにつれ、移動・寒暖差・維持管理の負担が重くなっていきます。老後の“夢の別荘”に待ち受けていた現実とは? FPの三原由紀氏が解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
「私、もう東京に帰る」と妻は去った…1,500万円で“八ヶ岳・夢のリゾート別荘”を手に入れた65歳夫婦。3年で直面した「二拠点生活」の現実【FPが解説】
あんなにワクワクしたのに…3年後「私だけ先に帰らせてもらうね」
最初に洋子さんの口をついて出たのは、「疲れた」という言葉でした。八ヶ岳西麓の標高が高いエリアは、日中こそ快適ですが、朝晩の冷え込みは想像以上でした。洋子さんには、その寒暖差が身体にこたえるように。
田中さん自身も、スーパーへ行くにもコンビニへ行くにも車が必要な生活で、長距離移動や夜間運転を、以前より負担に感じるようになっていきました。
さらに、滞在のたびに、湿気対策や片付け、冷蔵庫整理など細かな作業が発生します。「旅行」と違い、“もうひとつの生活”を維持する感覚に近かったといいます。
一方、東京には、洋子さんが長年かけて築いてきた日常がありました。月1回の美容院。隔週の整体。友人とのランチ。ジム。かかりつけ医。東京へ戻ると、「いつもの生活」に自然と気持ちが落ち着くようになっていったのです。
そして、購入してから3年たった夏。滞在3日目の夜、洋子さんはこう言いました。
「私、先に東京へ帰らせてもらうね」
別荘の購入を反対することもなく、むしろ洋子さんは夫の夢を応援していた側でした。それでも、年齢を重ねるにつれ、思い描いていた二拠点生活は、少しずつ身体への負担へ変わっていったのでしょう。
洋子さんが東京へ戻り、突然ひとりになった別荘で、田中さんは“夢の別荘暮らし”の理想と現実、自分たちの変化について、あらためて考えたといいます。
