令和7年版高齢者社会白書によると、65歳以上の人がいる世帯のうち、三世代が同居している世帯の割合はわずか7%です。このように核家族化が進む一方、なかには“新しい形の同居”を模索する人も……。75歳男性と息子夫婦の事例をもとに、家事労働に報酬が発生するいわば「雇用同居」の実態と、そこに潜む問題点をみていきましょう。
お義父さん、私を雇ってもらえませんか?…年金月16万円の75歳男性が、45歳“長男の嫁”から受けた「まさかの提案」【CFPの警告】
「まさかの提案」の真意
「同居は迷惑どころか、むしろありがたいことなんです」
トモキさん一家は現在、埼玉県の賃貸マンションに住んでいます。以前はトモキさんの勤務先も埼玉県内にあったのですが、数年前に会社が都内に移転したため、いまは片道80分かけて通勤しており、体力的に負担が大きくなっています。
また、夫婦の次男は来年大学受験を控えています。通学の利便性を考え都内への引っ越しも考えたものの、家賃の高さがネックで二の足を踏み、実現できずにいるというのです。
「なるほど……」
タダシさんがうなずくと、マスミさんは続けました。
「だからもしお義父さんが許すなら、同居させてほしいんです。それでね、お義父さん、同居するにあたってお願いがあって」
現在、マスミさんはパート勤めで月8万円ほどの収入があります。仮に、同居のために引っ越しをすることになれば、そのパートは辞めざるをえません。これから教育費のピークを迎える一家にとって、月8万円の収入がゼロになるのは大きな痛手です。
もちろん新しくパート先を探すという手もありますが、「同居が始まってすぐは家事の負担が増え、すぐには働けないだろう」と思ったマスミさんは、あるアイデアを思いつきました。
(家事代行のパートとして、お義父さんに雇ってもらえないかしら……)
そうして、今日の提案にいたったのでした。
「希望としては月10万円程度、少なくともパート収入分はいただけるとありがたいです」
予想外の提案に戸惑うタダシさん。即答することはできず、その日はいったん解散となりました。
タダシさんの考えにも変化が
最初は「なんて突拍子もない話だ」と感じたタダシさんでしたが、数週間かけて考えるうちに、気持ちは少しずつ変わっていきました。
「思い出の詰まった家を手放さずに済むし、自分も家事から解放される。将来もし介護をお願いすることになっても、お金を払う分罪悪感が少ない……」
「案外、悪い話ではないような気がしてきた」と顔を上げるタダシさんですが、はたしてこの「雇用関係を結んだうえでの同居」は本当に“Win-Win”なのでしょうか。
