「まさかの提案」の真意

「同居は迷惑どころか、むしろありがたいことなんです」

トモキさん一家は現在、埼玉県の賃貸マンションに住んでいます。以前はトモキさんの勤務先も埼玉県内にあったのですが、数年前に会社が都内に移転したため、いまは片道80分かけて通勤しており、体力的に負担が大きくなっています。

また、夫婦の次男は来年大学受験を控えています。通学の利便性を考え都内への引っ越しも考えたものの、家賃の高さがネックで二の足を踏み、実現できずにいるというのです。

「なるほど……」

タダシさんがうなずくと、マスミさんは続けました。

「だからもしお義父さんが許すなら、同居させてほしいんです。それでね、お義父さん、同居するにあたってお願いがあって」

現在、マスミさんはパート勤めで月8万円ほどの収入があります。仮に、同居のために引っ越しをすることになれば、そのパートは辞めざるをえません。これから教育費のピークを迎える一家にとって、月8万円の収入がゼロになるのは大きな痛手です。

もちろん新しくパート先を探すという手もありますが、「同居が始まってすぐは家事の負担が増え、すぐには働けないだろう」と思ったマスミさんは、あるアイデアを思いつきました。

(家事代行のパートとして、お義父さんに雇ってもらえないかしら……)

そうして、今日の提案にいたったのでした。

「希望としては月10万円程度、少なくともパート収入分はいただけるとありがたいです」

予想外の提案に戸惑うタダシさん。即答することはできず、その日はいったん解散となりました。

【注目セミナー】6月5日(金)
武者陵司が解く!
「日本株新時代」の全貌

タダシさんの考えにも変化が

最初は「なんて突拍子もない話だ」と感じたタダシさんでしたが、数週間かけて考えるうちに、気持ちは少しずつ変わっていきました。

「思い出の詰まった家を手放さずに済むし、自分も家事から解放される。将来もし介護をお願いすることになっても、お金を払う分罪悪感が少ない……」

「案外、悪い話ではないような気がしてきた」と顔を上げるタダシさんですが、はたしてこの「雇用関係を結んだうえでの同居」は本当に“Win-Win”なのでしょうか。