62歳の息子の元に82歳の父から届いた上機嫌な電話。「もう仕送りはいらないよ」という一言に、息子は言いようのない違和感を覚えました。元高校教師で几帳面、人を見る目には自信があったはずの父に、なにがあったのでしょうか。FPの青山創星氏と一緒に、老人に忍び寄るリスクの実態を見ていきましょう。
「もう仕送りはいらんぞ」年金13万円・82歳元高校教師父からの“上機嫌な電話”に違和感…急遽帰省した息子が悲鳴を上げた「テーブルの上・積み重なったパンフレット」の中身【FPの助言】
専門家が語る"孤独を埋める仕組み"の大切さ
帰宅後、健一さんは金融詐欺に詳しいFPの永瀬財也氏(仮名)に相談しました。
「お父様のケースは典型的です」と永瀬氏。「警察庁の2018年『オレオレ詐欺被害者等調査』によると、被害者の96.9%は手口を予め知っていたにもかかわらず被害に遭い、95.2%が『(どちらかというと)自分は被害に遭わない』と思っていたと回答しています。これは心理学でいう『楽観バイアス』。『自分だけは大丈夫』という根拠のない確信です」
「さらに衝撃的なのは米国NASD(全米証券業協会)の2006年調査です。投資詐欺被害者は8問の金融リテラシーテストで57.75%を正解、非被害者は41.00%。被害者の方が金融知識は高かったのです。報告書は『金融リテラシー教育は必要だが、それだけでは詐欺防止に不十分』と結論づけています」
「報告書が指摘するもう一つの鍵が『エキスパートの罠』。詐欺師は被害者の専門知識を褒めちぎる。すると被害者は『専門家として見られたい』心理から、突っ込んだ質問ができなくなる。お父様の『元教師』という肩書きこそが、狙われた理由だったのです」
健一さんは、几帳面に書き込まれた父のノートを思い出しました。あれは父なりの「専門家としての検証」。それを詐欺師は「さすが先生」と褒めちぎっていたに違いありません。
「では、どうすれば」健一さんが聞くと、FPは以下のように意外な答えをくれました。
「『孤独を埋める仕組み』と『お金を守る仕組み』の両方が必要です。前者は週一度の短い電話、地域包括支援センター、シニア向け講座。後者は消費者ホットライン188、銀行の代理人登録、不審な勧誘は家族に相談するルール作り。米国FINRA(金融業規制機構)等も『社会的孤立は高齢者の金融搾取の主要因』と共同声明を出しています。孤独を埋めなければ、どんな防御策も突破されるのです」
この事例からの学び
今回の事例から学べることは、以下のとおりです。
・被害者の96.9%は手口を知っていた——「知識」だけでは詐欺は防げません
・「自分は大丈夫」という「楽観バイアス」こそ最大の死角です
・金融知識が高い人ほど狙われる「エキスパートの罠」にも注意が必要です
・年賀状の枚数、電話の頻度——「親の孤独のサイン」を見逃さないでください
・消費者ホットライン188、銀行の代理人登録などを早めに使いましょう
詩人メイ・サートンの、こんな言葉があります。
寛治さんが陥っていたのは、前者の誰にも認められない「孤独感」でした。詐欺師はそこに付け込んできたのです。家族にできるのは、「孤独」を「豊かな独りの時間」に変えるために、こまめに関わりを持ち続けることなのかもしれません。
健一さんはいま、毎週日曜の夜に父へ電話しています。5分でいい、声を聞くだけでいい。それがどんな詐欺対策よりも効くことを、身をもって知ったからです。
ファイナンシャルプランナー
青山創星
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