「のんびり老後」が「孫の世話と経済的負担」へ

Aさん宅での5人の生活が始まりました。元夫の借金に疲れ果てていた娘をAさん夫婦は心配し、全面的に協力するものの、無職の娘と孫2人を加えた5人分の生活費は年金だけでは到底賄いきれません。「少しのあいだだから」と、貯蓄を切り崩しながら生活します。

同居から1年を過ぎるころには、娘の体調も落ち着いてきました。Aさんは「そろそろ働いてくれるだろう」と期待して待っていましたが、娘の行動は正反対のものでした。就職活動をする気配はなく、友人と遊びに行ったり、家事を手伝うこともなく暇さえあればスマホをみたり……。孫の世話をAさん夫婦に任せて娘1人がのんびり過ごしていると、だんだん腹が立ってきます。

ある日、事件は起きます。Aさんがいつものように特売のオムツを抱えて帰宅すると、玄関に見慣れない大きな段ボール箱が届いていました。宛名は娘。中から出てきたのは、最新型のゲーム機でした。

「これ、どうしたんだ?」と問うAさんに、娘は悪びれる様子もなくこう答えました。「値上げするって聞いたから、その前に買いたくて」。

ついに、Aさんは堪忍袋の緒が切れてしまいます。

「いい加減にしなさい! いますぐこの家を出ていけ!」

ひとり娘ということもあり、父親に怒鳴られたことのなかった娘は驚いて泣き崩れました。しかし、彼女の目を覚まさせる愛の鞭となったようです。無職の娘は子どもを連れて出ていくところもなく、Aさんに懇願します。

「就活するので、仕事が決まるまで待ってほしい」

親子共倒れを防ぐための「同居のルール」

その後、娘はハローワークを通じて母子家庭の支援がある会社に就職が決まりました。子どもたちは保育園に預け、自立に向けてアパート探しを始めます。

働きはじめて3ヵ月が経ったある日、仕事から帰宅した娘にAさんは、新しい提案をしました。

「これから子どもたちの教育費が掛かってくるだろう。アパートの家賃分は教育費のために積み立てしなさい。自分たちの生活費を家に入れるなら、この家に住み続けていい」

娘は、ようやく近くに親がいるありがたみに気づきます。現在は、生活費を家に入れながら、将来に備えて着実に貯蓄を増やしています。

子ども以外の同居者がいる母子世帯は38.8%となっており、「親と同居」が51.8%と最も多くなっています。ただ、親も親自身の生活があり、親子共倒れにならないよう、経済的な境界線を引くなど、同居のルールを話し合っておくことが必要です。

三藤 桂子
社会保険労務士法人エニシアFP
共同代表

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