多くの人が新NISAの恩恵を享受しているはずの強気相場において、なぜか資産を減らしてしまう人がいます。市場全体が右肩上がりのなか、彼らの口座だけがマイナスに染まっているのは、決して運が悪いからではありません。その原因とは……? 本記事では、好相場の裏側で起きている「自滅」のメカニズムを投資歴35年のベテラン個人投資家が解説します。
新NISA、こんなはずじゃなかった…老後資金のために投資を始めた月収78万円・46歳サラリーマン、スマホの電源をブチ切り「震える手で顔を覆った」理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

一流サラリーマンが選んだ投資戦略

「今日も遅くなったな……」。終電近い電車のシートに揺られ、疲れ果てた顔で一人呟くのは、中堅機械メーカーの本社企画部門の部長を務める高田さん(仮名/46歳)です。月収は78万円、会社の経営戦略を任される多忙な日々を送るなか、次期役員候補とも目され、サラリーマンとして順調に出世街道を歩んできました。

 

そんな高田さんの顔が曇ったのは、妻への帰宅LINEのついでに開いた証券会社のアプリ画面をみたときです。連日の株価上昇というニュースとは裏腹に、画面にはマイナスを示す青い文字が表示されています。

 

「なぜ、俺の戦略はこうも軒並みはずれるんだ……?」

 

高田さんはスマホの電源を強制的に落とし、震える手で顔を覆いました。

 

新NISAの開始を機に投資に興味を持った高田さんは、老後に向けて資産を増やそうと、投資を始めることを決めました。投資を始めるにあたっては、持ち前の慎重さで徹底的に勉強。ネットで有名な投資家の動画で効率的に情報を集め、金融機関や有名なアクティブファンド主催のセミナーに参加した結果、辿り着いたのが「コア・サテライト戦略」です。

 

コア・サテライト戦略とは、投資する資産を「守りのコア」と「攻めのサテライト」にわけて運用する手法。コアでは長期的に安定したリターンが期待できるインデックスファンドを活用して運用、サテライトではリスクをとって高いリターンを狙うというものです。

 

高田さんは仕事で経営戦略を舵取りするなか、戦略の重要性を誰より理解しているという自負がありました。実際、彼が3年前に立案した戦略により、会社の業績は順調に推移しています。「コア・サテライト戦略」という言葉の響きもスマートで気に入りました。

 

加えて彼のプライドを刺激したのは、インフルエンサーやアクティブファンドの代表の「インデックス投資家は三流で、思考停止している」「オルカン信者は出世しない」というセリフです。

 

「インデックス投資って思考停止だろ?俺は三流じゃないからな」

サラリーマン社会の荒波を生き抜いてきた高田さんにとって、「三流」「思考停止」といった言葉は到底許容できるものではありません。

 

「確かに市場平均で満足するなんて思考停止だよな……」

 

コア・サテライト戦略では、攻めのサテライトの比率は3割程度までが一般的とされていますが、戦略立案に自信のある高田さんは5割にまで引き上げました。高田さんが選び抜いた投資信託や数銘柄の個別株。それらは成長著しいインド株や、「オルカン信者は出世しない」と豪語したファンドが運用する投資信託、あるいは高配当株や誰も目をつけていない将来有望な中小型株です。彼が考え抜いた「完璧な布陣」だったはずでした。