多くの人にとって人生最大額の入金となるであろう「退職金」。しかしながらメディアで「老後2,000万円問題」について議論がなされるとき、退職金の存在について触れることはほとんどありません。それに加えて現役世代の多くが退職金についてほぼ何も知らないまま働いています。本稿では、企業年金制度と投資教育を専門として活動しているFPの山崎俊輔氏による著書『老後に4000万円って本当ですか? 物価が上がる時代の退職後資産の考え方』(日経BP・日本経済新聞出版)より一部抜粋・再編集し、老後における「退職金」の立ち位置について解説します。
「老後2,000万円問題」の議論のたびにスルー…ワイドショーのコメンテーターが「退職金」について触れないワケ【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

ワイドショーのコメンテーターも金融業界も…「退職金についてはだんまり」のワケ

芸能人がワイドショーでコメンテーターを務めるとき、退職金について触れてくれないのは仕方ないところがあります。彼らは退職金のない働き方をしているからです。多くは個人オフィスをかまえており、その代表です。

 

つまり、知らないものはコメントできないというわけです。だからとりあえず「2000万円なんか無理でしょ」と誰でも分かりやすいイメージでコメントをすることになります(ほとんどの著名なコメンテーターは2000万円くらい自分は持っていて「庶民には無理かも」と言っているのかもしれません)。

 

メディアが退職金について触れないだけでなく、金融関係の業界もまた「退職金についてはだんまり」を決め込んでいます。

 

お客さまに退職金のことをヒアリングするとやぶへびになる恐れがあります。「……なるほどなるほど。あなたの会社の退職金を勘案すれば、わが社のご提案する○×商品を買わなくても老後は大丈夫ですね」となったら、それ以上セールスができなくなるからです。それよりはむしろ「老後2000万円不安解消の切り札、○×エリアのマンションオーナーになろう!」のほうが危機感を煽れてセールスに使いやすいわけです。

会社員の3分の2が「59歳」まで自分の退職金を知らないという現実

芸能人のコメンテーターだけが退職金を知らないわけではありません。そもそも会社員自身も退職金制度の理解が低いのです。

 

実は「老後2000万円」レポートの中には退職金制度の認知度に関する調査結果も示されていますが、これが驚くほどに低い数字となっています。

 

フィデリティ退職・投資教育研究所(当時)の「高齢者の金融リテラシー調査2019」では、退職済みの方々に退職金額を知ったタイミングをたずねています。

 

●退職直前・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31.6%

●退職から半年前以内・・・・・・・・・・・・・・・ 20.3%

●退職半年前から1年前以内・・・・・・ 12.0%

 

意味を考えればすごい数字です。まず、「退職日まで自分の退職金額を知らない人」が3人に1人ということになります。「退職日から1年以内」にさかのぼると3人に2人が含まれます。59歳まで退職金額を知らずに働いている人がこれだけの割合いるということです(60歳定年の場合)。