令和8(2026)年度より、在職老齢年金制度の支給停止となる基準額が「月51万円」から「月65万円」に引き上げられました。これにより、高齢者の“働き控え”解消が期待されています。しかし、手放しで喜べることばかりではないようで……。68歳夫婦の事例をもとに、制度改正がもたらす変化とその実態をみていきましょう。
あら、もっと働けるじゃない…年金月17万円の68歳男性が「家族のため」をやめた日。きっかけはテレビを見ながら妻がつぶやいた“無神経な一言”【CFPが「在職老齢年金」制度改正のポイントを解説】
制度改正の影響は?
厚生労働省「年金制度改正の全体像」によると、2025(令和7)年時点で約50万人が支給停止の対象となっているそうです。そして、今回の改正によってそのうちの約20万人が全額支給に転じるとみられています。
ただ、65歳以上で厚生年金に加入しながら働く人は約308万人です。このうちの20万人は約6.5%相当であり、今回の改正で直接的に年金額が変わる人はあくまで少数派であると言えるでしょう。
とはいえ、本改正を通じて高齢者の働き控え解消が期待されています。
「家族のため」をやめた日
基準額の引き上げによって、収入を増やしても年金が減額されにくくなったマサノリさん。しかし、働く意欲はむしろ削がれているようでした。
「そんな単純な話じゃないんだよ……」
過去の肩書きやプライドを手放し、現役時代よりも少ない給与で、現役時代と同じような仕事をこなす……。再雇用で働き続けること自体が、マサノリさんにとって大きな負担となっていたのです。
また、収入が増えれば税金や社会保険料の負担も増える可能性があり、増えた分だけ手取りが増えるとは限りません。
さらに、最近は身体の衰えも如実に感じていたところでした。
そんな夫の状況を一切考慮しない妻に、マサノリさんは「『家族のために』と無理して働くのはもうやめよう」と、密かに心に誓ったのでした。
損得だけを考えると迷う
今回取り上げた在職老齢年金制度の改正は、高齢者の就労を後押しすることで、社会保障を支える側としての役割を担ってもらうことを目的としたものです。
しかし、収入を増やせる環境が整ったからといって、それがそのまま最適な選択になるとは限りません。
年金制度は、今後も見直されることが予想されます。そのたびに“損か得か”だけで判断していては、迷いが尽きないでしょう。だからこそ、収入や働き方、生活のバランスを踏まえて、自分なりの判断軸を持つことが大切です。
石川 亜希子
CFP
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