年金分割とは、離婚をした際、婚姻期間中に夫婦が納めた厚生年金の実績を、「多いほうから少ないほうへ」分割して分ける制度です。夫のほうが稼いでいる(年金を納めている額が多い)場合、妻側は「夫の年金の50%を受け取れる」と考えるかもしれません。しかし、この考えは誤りです。年金ルールの注意点について、とある夫婦の事例をもとにみていきましょう。
年金は75万円増えるはずじゃ…77歳女性の誤算。離婚後の年金受給額が「想定よりも30万円少なかった」まさかの理由【社労士CFPが「年金分割の注意点」を解説】
年金は75万円増えるはずじゃ…ヨウコさんの誤算
そう確信したヨウコさんは、ついに夫に離婚を切り出します。するとオサムさんも、退職後に妻の態度が急変し、自宅での日々が息苦しくなっていたらしく、離婚は思いのほかあっさりと成立したそうです。
離婚後に年金分割の手続き(標準報酬改定請求)も済ませ、分割後の新しい年金額が振り込まれるようになりました。
しかし、実際に増えた年金額の合計は年間で約45万円程度。年金分割を知った際に予測した75万円より30万円近くも少なかったのです。これは何故でしょうか。
「年金分割」の盲点
45万円しか増えなかった理由、それは「年金分割のルール」によるものでした。
まず、分割の対象となるのは「夫が受け取っている厚生年金の総額の半分」ではありません。老齢厚生年金の全体ではなく、現役時代の給与に応じて決まる「報酬比例部分」のみが分割の対象となります。
また、結婚前の独身時代や、離婚後に働いた期間の記録は含まれません。対象となるのは「婚姻期間中」の記録のみです。
そして婚姻期間中、夫婦ともに厚生年金に加入していた場合、両者の厚生年金加入記録を合計し、そのうえで最大50%ずつ分割することになります。
ヨウコさんの場合、このルールに従って分割した結果、報酬比例部分としての増額分は「55万円」となったのでした。
しかし、実際に増えた年金の合計額は55万円ではなく45万円です。
報酬比例部分は55万円増えたが、実際には45万円しか増えていない…
実は、ここに年金ルールの盲点があります。
差額の10万円の正体、それは「振替加算」の消滅です。
ヨウコさんの老齢基礎年金には、これまで年間約10万円の「振替加算」がついていました。これは、大正15(1926)年4月2日から昭和41(1966)年4月1日までに生まれた人を対象とした加算で、主に専業主婦に加算されます。