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「もっと増えるはずだった」70歳で突きつけられた残酷な現実
都内の分譲マンションで一人暮らしをする山田徹さん(70歳・仮名)。大卒から定年まで大手メーカーで働き、再雇用制度を利用して70歳まで働き続けました。なぜ、定年後も働き続けるという選択をしたのでしょうか。
「40年近く働いてきて、“働かない自分”が想像できなかった。仕事を辞めても、することがないですから」
山田さんは50代半ばで、20年連れ添った妻を病気で亡くしています。「子どもたちはすでに社会人や大学生で手がかからなくなっていたため、生活面で大変なことはなかった」といいますが、精神的なショックは大きかったといいます。
「平均寿命から考えて、妻より先に私が死ぬものだと思っていました。あんなに若く亡くなるなんて、想像もしていなかったのです」
働き続ける選択をしたのは、そんな失意の影響もあったのでしょう。元気をなくした徹さんを子どもたちは非常に心配したといいます。だからこそ、「老後、家族には迷惑をかけたくない」という思いが強まりました。
「年を取れば病気になったり、介護が必要になったりするのは仕方がない。でもお金があれば、家族に負担をかけずにいられます。だから、できるだけ節約してお金を貯めようと思いました」
年金を繰り下げたのもそのためです。仕事をしていて給与があるなら、年金を増やすほうがいい――そう考えたのです。単純計算で、65歳から受け取れば月18.5万円。それが70歳まで待てば月25万円を超えます。年金で生活費をすべて賄ってもお釣りがくる。そう思うと、受給を我慢することも、かえって楽しく思えたといいます。
しかし、その期待は一瞬で崩れます。70歳になり、年金を受け取ろうと決めた山田さん。年金事務所の窓口で、予想だにしない事実を告げられます。
「担当者が資料を確認しながら、困ったような顔をしたんです。『山田さん、残念ながら繰下げによる増額は適用されません』と。一瞬、耳を疑いました。5年も待ったのに、なぜだと問い詰めましたよ」
原因は、50代で亡くした妻の存在でした。山田さんの妻も会社員として働いており、彼女が亡くなった際、山田さんには「遺族厚生年金」の受給権が発生していたのです。
「年金なんて先の話だったので、そんなルールがあるとは思いもしなかった。増額を楽しみに耐えてきた私は、一体何だったのでしょうか。むなしいですね……」
