官公庁が算出する統計データ、平均年収や平均の金融資産額などを見ると「こんなにたくさんもらっていない」「こんなに資産はない」と感じることはありませんか? 収入はなかなか増えないのに、物価上昇は容赦なく続く……こんな社会に対して、漠然とした不安を抱いている人も多いのではないでしょうか。そこで今回、YouTubeチャンネル登録者数40万人超の人気FP鳥海翔氏が、何歳までにいくら貯めれば安心なのか、データやシミュレーションを交えて紹介します。
日本の70代・2人以上世帯の平均資産は「2,400万円」だが…統計データの裏に隠された「経済格差」の真相【FPが解説】
経済格差が進む日本で「安心の老後」は手に入る?
現在、世の中では経済的格差が広がっています。資産が3,000万円以上ある世帯もあれば、貯蓄ゼロの世帯も少なくありません。
周囲の人々はどれくらい蓄えているのか、そして自分自身はいくらあれば安心して老後を迎えられるのか……悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
データが示す「日本の家計」の過酷な現実
まずは、客観的なデータから世間の実態を整理しましょう。
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によると、2人以上世帯における金融資産の平均値は1,940万円であるのに対し、中央値は720万円となっています。
この1,220万円もの開きこそが、現代日本の「格差」の正体です。平均値は一部の富裕層が引き上げているだけで、実態は中央値、あるいはそれ以下に多くの世帯が集中しています。
さらに、70代(2人以上世帯)に絞ってみていきましょう。金融資産ゼロの世帯を含んだ場合の平均値は2,400万円、中央値は1,100万円でした。しかし、金融資産ゼロの世帯を除くと、平均値は2,700万円に、中央値は1,400万円に、それぞれ300万円ずつ引き上がります。
実は、日本の70代(2人以上世帯)は、金融資産ゼロの世帯が約2割にのぼるのです。よって、「中央値付近だから大丈夫」という安易な安心感は、今の日本では通用しません。
「単身・夫婦別」老後資金の必要額シミュレーション
では、具体的にいくら準備すべきか。総務省の家計調査をベースに、物価上昇や人生の突発的なアクシデントを考慮した「現実的な数値」を算出します。
①単身世帯
単身者の老後における不足額(年金だけでは足りない生活費)は、月に約3万円とされています。
【単身世帯の生涯コストの内訳】
■30年間の不足合計:3万円 × 12ヶ月 × 30年 = 1,080万円
■物価上昇(年2%)の考慮:約1,460万円
■予備費(介護・医療・リフォーム等):500万~1,000万円
これらを合算すると、単身世帯における安心の目安は1,900万~2,500万円となります。
②夫婦世帯
夫婦世帯の場合、月々の不足額は約2万円。単身者より少なく見えますが、ここには大きな落とし穴があります。それは「リスクが2人分」になり、さらに「1人になった時の負担が重い」という点です。
【夫婦世帯の生涯コストの内訳】
■前半15年(夫婦健在時):不足額月2万円(物価上昇込で約416万円)
■後半15年(一方が他界後):不足額月5.3万円(年金が減る一方、広い住宅の維持費は変わらないため。物価上昇込で約1,120万円)
■予備費(2人分の医療・介護・葬儀等):800万~1,200万円
これらを合計すると、夫婦世帯では2,300万~2,800万円が安心できる目安となります。2人で協力できる分、効率的に見えますが、後半の単身期間のコストが家計を圧迫するのです。