「あの人、変わったよね……」部下からの信頼も厚かった50代社員。しかし「あること」をきっかけに仕事への情熱を失い、働き方が一変します。年収600万円、課長職という安定した立場にありながら、将来に不安を抱え、静かに戦意を喪失していく……。本記事は、FPの小川洋平氏が、“50代の危機”に直面した一人のサラリーマンの事例をもとに、定年前後の働き方とお金の課題について解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
「頑張っても、もう意味ないか」…年収600万円・56歳サラリーマン、暗いリビングで通帳と家計簿を眺める夜。4年後の定年を前に「働き方が一変した」ワケ【CFPが解説】
虚しさの正体―努力の報いがないという絶望
田中さんの会社には、60歳で役職を外れる「役職定年」の制度があります。現在は年収600万円ほどですが、60歳を迎えると役職が外れ、年収は約450万円まで下がる見込みです。
これまで責任を背負い、現場と会社のために奔走してきた田中さん。しかし、役職定年による収入減は、あと4年に迫っています。
「あと数年、身を粉にして会社を救ったところで、待っているのは「給料3割カット」だけか……」
努力しても報われない構造に気づいたとき、人は静かにアクセルを緩めます。田中さんも例外ではありませんでした。
「無理に頑張らなくても、定年まではいられる。いや、頑張ると、むしろ損だ。省エネモードでやっていこう」
そう考えるようになり、目立たず、波風を立てず、“透明人間”のように働くことを選びます。しかし、そう割り切ろうと思っても、心の奥の虚しさを消すことはなかなかできませんでした。
仕事に人生を捧げたのに「お金が足りない」
収入減を前に、金銭的な悩みも襲い掛かります。
子どもたちの大学進学が重なり、教育費の負担はピークを迎えていました。また、住宅ローンも65歳まで残っており、家計は慢性的な赤字状態。老後資金の準備もほとんどできていません。
「会社のために人生を捧げてきた結果が、この不安と虚しさなのか?」
収入は下がるのに、支出は減らない。暗いリビングで家計簿と通帳を前に、田中さんは独りごちます。
収入減少を見越した準備もできず、かといって今さら仕事に情熱を燃やすこともできない。時間がただ無情に過ぎていきます。
