FPが語る「資産があっても働き続ける」という合理的選択

奥田さんのような選択は、以下の点で極めて合理的です。

第一に、60歳まで厚生年金に加入し続ければ将来の受給額は増え、健康保険料も会社が半額負担してくれます。これらはまさに「泉」であり、退職した瞬間に枯れてしまうものです。

第二に、田中さんのケースが示した「収益率の順序リスク」。退職直後に暴落が来ると、生活費のために底値で売るしかなくなります。給与という泉があれば、暴落時にも資産を売らずに耐え抜ける。投資の世界では「市場に居続けること」が最大の勝因ですが、それを可能にするのが「泉を持ち続ける」という地味な選択なのです。

第三に、精神的な健康です。組織に属していれば生活リズムは保たれ、同僚の消費行動や取引先の動向は投資判断を支えるシグナルにもなります。

資産形成のゴールは「会社を辞めること」だと思われがちですが、本当の経済的自由とは「辞められるけど辞めない」という選択肢を持つことかもしれません。

「頑張らない働き方」が教えてくれること

会社を「辞められる」余裕があることと、実際に会社を「辞める」ことはまったく違います。『選択肢』を持つこと、それ自体が本当の意味での経済的『自由』です。

田中さんは池の水の多さを過信し、泉を手放しました。奥田さんは池の水がどれほどあっても、小さな泉をなるべく多く、なるべく長く持ち続けることを選びました。

若手に「幽霊社員」と呼ばれても、奥田さんの心は穏やかです。彼が守っているのは会社での評価ではなく、枯れることなく湧き続ける、いくつもの小さな泉なのですから。

あなたの職場にいる「妙に余裕があるおじさん」も、実はこの激動の時代を最も冷静に見通している人物なのかもしれません。

ファイナンシャルプランナー
青山創星

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