若い世代の間で広がる「NISA貧乏」という言葉。将来に備えて積立投資を優先するあまり、今の楽しみや経験を後回しにしてしまう人も少なくありません。しかし、実はこうした価値観はそれほど新しいものではありません。かつて早い段階から投資に取り組み、数千万円、さらには1億円を超える資産を築いた人たちの中にも、同じような選択をしてきた人はいます。本記事では、多額の資産を築きながらも、70代になって「ある後悔」を抱えることになった男性が襲われた「虚無感」の理由を、FPの小川洋平氏が解説します。
「私は間違えたのかもしれません」…バブル熱狂時代も冷静に積立投資、60歳時点で資産1億円を突破した元公務員。静まりかえる家で「猛烈な虚無感」に襲われる理由【CFPが解説】
お金は自分が望む人生を実現するための「道具」である
お金がなく、不安を抱えた老後を送ることで後悔することも多いものですが、人生の終末期になると
・結婚しなかったこと
・子どもを持たなかったこと
・旅行や経験に時間とお金を使わなかったこと
こうした経験や人とのつながりに対する後悔をすることも、非常に多いのです。
お金はあくまで自分が望む人生を実現するための「道具」であり、「目的」ではありません。そして、どんな人生が自分にとっての幸せなのかは、人それぞれ違うもので、その基準は、日々の仕事や人間関係、趣味や旅といった経験を通じて、少しずつ形づくられていくものです。
しかし、若い頃に無理をして投資に資金を回しすぎると、そうした「かけがえのない経験の機会」を失ってしまう可能性もあります。
今話題のNISA制度は、確かに非常に有利な制度で、将来の資産形成のために積極的に活用したいものです。ただし、重要なのは「制度を最大限使うこと」ではなく、「自分の人生にとって最適なバランスで活用すること」です。
せっかくの制度を、「自分の幸せのため」に使えるよう、自分にとってどんな人生が幸せなのかを考えること。そして、それを考えるためのベースを作るために、リスクを負っても許容できる若いうちに、さまざまな経験値を積み重ねることが大事です。
手段と目的を履き違えず「後悔のない人生」を
自分が望む人生のため、また、リタイア後に自分らしく余生を送るために、資産形成は大切です。しかし、今回の佐藤さんのように大きな資産を築きながらも、人生を後悔してしまうことも多いものです。
将来への備えはたしかに大事ですが、今しかできない経験や人とのつながりにしっかりと向き合うこと。その積み重ねによる選択と行動によって、自分にとって理想に近い人生を創っていくことができるのです。
せっかくの制度を上手に活用しながらも、手段と目的を履き違えて本末転倒にならぬよう「貯める」と「使う」のバランスを考えていきたいものです。
小川 洋平
FP相談ねっと