資産は増え続けても満たされない…虚無感の先で気づいたこと

両親はすでに10年前に他界し、佐藤さんは広い実家で一人暮らしを続けています。人と会話する機会はほとんどなく、お盆や正月に同級生と顔を合わせる程度。日常的に誰かと話すことはほぼありません。

経済的には何の不安もなく、年金は月17万円程度ありますが、生活費はそれ以下で収まるため、資産は減るどころか運用によって増え続けています。

それでも、ふとした瞬間に強い虚無感に襲われるようになりました。

「何のためにここまで貯めてきたのだろう」
「誰のためにこのお金を残すのだろう」

そんな思いが頭をよぎるようになったのです。

やがて佐藤さんは「生きる意味」を探すようになり、地域のボランティア活動に参加し、介護施設の送迎の手伝いを始めました。さらに、独学でマジックを覚え、保育園や幼稚園で子どもたちに披露するようにもなりました。

子どもたちの笑顔や、「ありがとう」という言葉。それは、これまでの人生で感じたことのない充実感でした。

「もっと早く、こういう時間を持てていたら……」

そう思う一方で、資産はあっても、それを分かち合う家族はいません。皮肉にも、最も満たされている今こそ、これまでの人生への後悔が静かに胸に広がっていたのです。