若い世代の間で広がる「NISA貧乏」という言葉。将来に備えて積立投資を優先するあまり、今の楽しみや経験を後回しにしてしまう人も少なくありません。しかし、実はこうした価値観はそれほど新しいものではありません。かつて早い段階から投資に取り組み、数千万円、さらには1億円を超える資産を築いた人たちの中にも、同じような選択をしてきた人はいます。本記事では、多額の資産を築きながらも、70代になって「ある後悔」を抱えることになった男性が襲われた「虚無感」の理由を、FPの小川洋平氏が解説します。
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「私は間違えたのかもしれません」…バブル熱狂時代も冷静に積立投資、60歳時点で資産1億円を突破した元公務員。静まりかえる家で「猛烈な虚無感」に襲われる理由【CFPが解説】
資産は増え続けても満たされない…虚無感の先で気づいたこと
両親はすでに10年前に他界し、佐藤さんは広い実家で一人暮らしを続けています。人と会話する機会はほとんどなく、お盆や正月に同級生と顔を合わせる程度。日常的に誰かと話すことはほぼありません。
経済的には何の不安もなく、年金は月17万円程度ありますが、生活費はそれ以下で収まるため、資産は減るどころか運用によって増え続けています。
それでも、ふとした瞬間に強い虚無感に襲われるようになりました。
「何のためにここまで貯めてきたのだろう」
「誰のためにこのお金を残すのだろう」
そんな思いが頭をよぎるようになったのです。
やがて佐藤さんは「生きる意味」を探すようになり、地域のボランティア活動に参加し、介護施設の送迎の手伝いを始めました。さらに、独学でマジックを覚え、保育園や幼稚園で子どもたちに披露するようにもなりました。
子どもたちの笑顔や、「ありがとう」という言葉。それは、これまでの人生で感じたことのない充実感でした。
「もっと早く、こういう時間を持てていたら……」
そう思う一方で、資産はあっても、それを分かち合う家族はいません。皮肉にも、最も満たされている今こそ、これまでの人生への後悔が静かに胸に広がっていたのです。