ペアローンのメリットの裏側にある“見えにくいリスク”

近年、住宅価格の高騰と共働き世帯の増加を背景に、ペアローンでマイホームを購入する家庭が増えています。

ペアローンの最大のメリットは、「借入可能額が増える」ことです。単独ローンでは難しい物件に手が届く点は大きな魅力です。 一方で、その前提は「共働きが続くこと」です。離婚、離職、転職、病気、介護などによりどちらかの収入が減少すると、返済計画は大きく揺らぎます。

また、ペアローンは夫婦それぞれが主債務者となり、互いに連帯保証を負う仕組みです。関係が変化しても銀行に対する返済義務はそのまま残ります。そのため、ローンの一本化には「単独での支払い能力」が厳格に求められます。

ペアローンを選択する際には、「リスクを理解したうえで選択しているかどうか」が重要です。

・「借りられる額」ではなく「維持できる額」で考える
 ペアローンで借りられる上限まで借りるのではなく、可能であればどちらか一方の収入、または「1.5人分」程度の水準に抑えることで、片方が時短勤務になったり、万が一離職したりしても返済可能な状態を維持しやすくなるでしょう。

・物件の「資産価値」
 購入時は「買えるかどうか」に意識が向きがちですが、「手放せるかどうか」という視点も重要です。立地や需要といった「資産性」は、いざというときの安心材料になります。

・「もしも」を夫婦で共有しておく
離婚や収入減少といった話題は避けがちですが、あらかじめ話し合っておくことで、いざというときの判断がスムーズになります。

人生の変化があったとしても、選択肢を持ち続けられるように

住宅購入は、多くの人にとって人生で最も大きな買い物です。だからこそ、「買えるかどうか」だけでなく、「持ち続けられるか」「手放せるか」という視点も欠かせません。

特にペアローンは、選択肢を広げる一方で、将来の自由度を下げる可能性もあります。 マイホームは、本来人生を豊かにするためのものです。それが、将来の選択を縛る存在になってしまっては、元も子もありません。

「収入や環境など、人生の変化があったとしても、選択肢があるかどうか」

住宅を購入する前に一度立ち止まって考えてみてください。その視点が、「マイホームを買ってよかった」と思える未来を守る、何よりの備えになるはずです。
 

伊藤 寛子
ファイナンシャル・プランナー(CFP®)