年金は早くもらったほうが得――そんな「年金繰上げ」に対する注目が、現役世代の会社員の間で高まっています。数字を見て、情報を集めて、納得して決めたはず……。それでも、制度上のルールを知らなかったことで、思いもよらなかった事態に直面することがあります。本記事では、ある60代男性の事例をもとに、繰上げ受給に潜む「見落とされやすい落とし穴」について、FPの三原由紀氏が詳しく解説します。
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年金の繰上げなんてしなきゃよかった…61歳半ばで年金受給を開始した元会社員。「早くもらったほうがいいに決まってる」納得の決断が一転、病院で思わず叫んだワケ【FPの助言】
「早くもらうか」だけで決めない…今できる現実的な備え
では、年金受給を開始する時期について、私たちはどう考えればよいのでしょうか。
まず大切なのは、繰上げ受給を「損か得か」だけで判断しないということです。減額率や受取総額の比較も必要ですが、それ以上に「どんなリスクに備えられなくなるか」を確認することが重要です。特に障害年金は、現役世代だけの話ではありません。60代でも、病気やケガによって生活が一変するケースは多くあります。
具体的な選択肢としては、例えば、繰上げを急がず、まずはアルバイトや再雇用収入で数年様子を見ること、支出を見直して「もらう時期」に余裕を持たせること、そして障害年金や遺族年金といった制度の仕組みをあらかじめ整理して理解しておくことです。どれも劇的な解決策ではありませんが、「取り返しがつかない選択」を避けるという意味では、大きな助けになるでしょう。
高橋さんは「ちゃんと考えて決めたつもりだった」と振り返ります。数字も見た、情報も集めた。それでも、想定していなかった事態が起きたとき、初めて自身の選択の重みを実感したといいます。
年金は「いつもらうか」だけでなく、「その選択によって何が変わるか」も含めて考えるものです。
その選択、本当に今持っている情報だけで決めてしまってよいものか――いま一度立ち止まって考える価値は、あるのではないでしょうか。
三原 由紀
プレ定年専門FP®