「会社を辞めれば、すべてが自由になる」——そう信じてFIREを達成した増田陽一さん(42歳・仮名)。投資で資産を築き、夢にまで見た早期リタイア生活が始まりました。しかし待っていたのは、想像とはまったく違う現実でした。会社を辞めたのに、気づけば以前より身動きが取れなくなっている……。なぜ彼は「会社員最高!」と叫ぶことになったのでしょうか。本記事では、FIREの隠れた留意点とその対処法について、FPの青山創星氏が解説します。
「会社員って最高!」44歳男性、満員電車の中で漏れた心の叫び。資産7,000万円・FIREから2年で“夢の無職生活”から撤退したワケ【FPの助言】
「働いてないなら、親の面倒みれるでしょ」
メリハリのない毎日を送るなかで、増田さんをまさかの事態が襲います。
実家の母親が軽い脳梗塞で倒れたのです。幸い後遺症は軽く済んだものの、一人暮らしは困難に。姉からの電話は単刀直入でした。
「あなた、今働いてないんでしょ? じゃあお母さんの面倒みてよ」
「投資って、家でパソコン見てるだけでしょ?」——反論できませんでした。結局、週2回の実家通い、病院の付き添いと母の買い物の手伝いが増田さんの日常に加わりました。
そして、FIRE開始から1年半。母親の介護に伴う自宅バリアフリー改修に約350万円、車の故障による買い替えに約300万円と、思わぬ出費が立て続けに発生しました。
会社員であればボーナスで補填することができますが、FIRE生活では資産を削らなければなりません。退職後に切り替わった国民健康保険料と国民年金保険料の負担も、家計に重くのしかかりました。
4%ルールなどというものは絵に描いた餅で、気づけば7,000万円あった増田さんの金融資産は、たった2年で約5,500万円に。インフレや突発的な出費を考えると、「あと5年で危険水準では」という焦燥が広がっていきました。
まさかの「保育園問題」に直面して
そんな最中、妻が第二子を妊娠。本来喜ばしいはずのニュースでしたが、ここでも思わぬ壁が立ちはだかります。
現在、保育園の入園審査は「保育の必要性」を点数化する仕組みで、片方が無職だと大幅に減点されるということがわかったのです。会社員ではない増田さんは、行政からは「家にいて子どもの面倒を見れる人」として扱われます。
実際、都内主要区の利用調整基準を見ると、両親フルタイム世帯と片方求職扱い世帯の基本指数差は、渋谷区と港区で18点、世田谷区に至っては40点にも達します。この点差は、入園激戦区では事実上の「入園不可能」を意味します。
上の子まで保育園を追い出される可能性に直面した増田さんは、ついに決断しました。
「会社員に戻るよ」
FIREからわずか2年のことでした。
