「会社を辞めれば、すべてが自由になる」——そう信じてFIREを達成した増田陽一さん(42歳・仮名)。投資で資産を築き、夢にまで見た早期リタイア生活が始まりました。しかし待っていたのは、想像とはまったく違う現実でした。会社を辞めたのに、気づけば以前より身動きが取れなくなっている……。なぜ彼は「会社員最高!」と叫ぶことになったのでしょうか。本記事では、FIREの隠れた留意点とその対処法について、FPの青山創星氏が解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
「会社員って最高!」44歳男性、満員電車の中で漏れた心の叫び。資産7,000万円・FIREから2年で“夢の無職生活”から撤退したワケ【FPの助言】
「自由」の代償は、予想外の場所からやってきた
FIRE生活最初の数週間は充実していました。朝はゆっくり起き、投資の勉強。昼は散歩に出かけ、夜は家族と食卓を囲む。理想そのものです。
しかし、徐々に空気が変わります。
フルタイムで働く妻から「私は毎日仕事で疲れてるんだけど」の一言。退職前の夫婦での話し合いで、妻は「私は働いていたい。あなたが仕事を辞めるなら、家のことはやってね」と言われていました。
「もちろん家事は俺がやる」――そう宣言したものの、実際にやると家事は想像以上に大変でした。朝のゴミ出しから子どもの朝食、保育園の送迎、夕食づくり。一日があっという間に過ぎ、投資の勉強時間などどこにもありません。
「会社員時代は激務でも、仕事が終われば自分の時間がありました。でも家事に終わりはありません。会社を辞めたのに、自由な時間が一秒もないんです」
そしてふと気づいたことがありました。これまで18年間、妻はこれと同じことを仕事と並行してやっていたのです。文句ひとつ言わずに。
増田さんは当時を振り返り、「会社員の頃は、自分もそれなりに手伝っているつもりでした。でも実際に全部やってみたら、手伝うなんてレベルじゃなかった。妻に対して申し訳なくて、言葉が出ませんでした」と語ります。
ただ、その気づきが日々の救いになったかといえば別の話です。会社なら成果が評価され給与で報われますが、家事は「やって当たり前」。会社員時代は必死に働き、成果が出ればそれを認めてもらえました。しかし、FIREでその役割を手放したことで、増田さんは日々の張り合いや生きがいまで失われていったのです。
