「自由」の代償は、予想外の場所からやってきた

FIRE生活最初の数週間は充実していました。朝はゆっくり起き、投資の勉強。昼は散歩に出かけ、夜は家族と食卓を囲む。理想そのものです。

しかし、徐々に空気が変わります。

フルタイムで働く妻から「私は毎日仕事で疲れてるんだけど」の一言。退職前の夫婦での話し合いで、妻は「私は働いていたい。あなたが仕事を辞めるなら、家のことはやってね」と言われていました。

「もちろん家事は俺がやる」――そう宣言したものの、実際にやると家事は想像以上に大変でした。朝のゴミ出しから子どもの朝食、保育園の送迎、夕食づくり。一日があっという間に過ぎ、投資の勉強時間などどこにもありません。

「会社員時代は激務でも、仕事が終われば自分の時間がありました。でも家事に終わりはありません。会社を辞めたのに、自由な時間が一秒もないんです」

そしてふと気づいたことがありました。これまで18年間、妻はこれと同じことを仕事と並行してやっていたのです。文句ひとつ言わずに。

増田さんは当時を振り返り、「会社員の頃は、自分もそれなりに手伝っているつもりでした。でも実際に全部やってみたら、手伝うなんてレベルじゃなかった。妻に対して申し訳なくて、言葉が出ませんでした」と語ります。

ただ、その気づきが日々の救いになったかといえば別の話です。会社なら成果が評価され給与で報われますが、家事は「やって当たり前」。会社員時代は必死に働き、成果が出ればそれを認めてもらえました。しかし、FIREでその役割を手放したことで、増田さんは日々の張り合いや生きがいまで失われていったのです。