50歳以上になると、毎年誕生月に届くねんきん定期便の内容が変わり、年金の受給をより具体的に考えられるよう、受取方法による受給額の比較などが記載されます。しかし、そこに表示されている受給額がそのまま受け取れるかというと、そうとは限りません。特に、60歳以降も働き続けている場合、実際の支給額が大幅に少なくなるケースも。本記事では、Aさんの事例とともに、「在職老齢年金」や「特別支給の老齢厚生年金」といった年金制度の注意点について社会保険労務士法人エニシアFP共同代表の三藤桂子氏が解説します。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。
じゃあ、ねんきん定期便に書いてある「114万円」はなんだったのか…年金受給手続きを行った67歳再雇用の男性、ガッカリ。「9万円」しか支給されなかったワケ【FPが解説】
年金を繰り下げて70歳まで働く男性と、週3バイトで暮らす同級生との差
老齢年金は原則として65歳から受け取れますが、65歳より早く受け取りたい場合は「繰上げ受給」、遅く受け取りたい場合は「繰下げ受給」を選ぶことができます。繰上げ受給をすると、早く受け取る分だけ年金が減額され、逆に繰下げ受給をすると増額された年金を受け取ることになります。
67歳のAさんは、65歳まで勤めていた会社に再雇用で働いています。社長から「後進の指導と人手不足のため、力を貸してほしい」と懇願され、70歳まではいまの会社で働き続けるつもりです。
Aさんの会社では早い段階で定年が引き上げられており、65歳までは給与が下がることなく、年収は約670万円でした。
「年金がもらえる65歳まで収入が下がらないなんてありがたいな」
Aさんはそう喜んでいましたが、65歳以降も働くことにしたため、「収入があるのに年金を受け取りはじめるのはもったいないのでは」と考えるようになりました。ネットで検索してみると、「繰下げ受給にすれば、受給開始を遅らせた分だけ年金が増える」ことが判明。「もう少し頑張ろうか」と、Aさんは繰下げ受給を選択することにしました。
週3日のバイトで十分…同級生との差にしょんぼり
そんなある日のこと。学生時代の友人に誘われ、同級生3人(Bさん、Cさん)と飲みにいきました。3年ぶりの再会とあって、近況報告に花が咲きます。Aさんが「年金は繰下げ受給を選んで再雇用で働いている」というと、BさんとCさんは驚いた様子をみせました。
「すごいな! 働き者のAらしいよ。俺なんかずっと家にいると奥さんが嫌がるから仕方なく働いてるけど、本当は年金だけでも生活できるからさ。役職のない気楽なバイトで十分だよ」
2人とも大学卒業後ずっと会社勤めだったため、年金額は200万円を超えているようです。
「バイトで月10万円ぐらい稼げれば収入は年金と合わせて月30万円になるから、生活に困ることはないよ。だいたい週3日働いて、あとは趣味とか旅行に使ってる」
対するAさんは、年金を受け取らず、週5日のフルタイム勤務。職場の雰囲気は悪くなく、後輩とも仲良くできているため、働くこと自体は苦ではないものの、このところ体力が落ちたのか、週末も家でゴロゴロするだけで時間が過ぎていってしまいます。週3日の勤務には正直、憧れを感じました。
「いいなあ、羨ましいよ」
思わずAさんがそう零すと、Cさんがいいました。
Cさん「ところでお前、“特別な年金”はもらってるんだろうな?」
