「せっかくの資産が使えない」事態を防ぐには

このケースの本質は、「資産の額」ではなく「管理の仕組み」にあります。

認知症などで判断能力が低下すると、本人名義の資産は凍結状態となり、家族であっても自由に使うことができません。成年後見制度はその解決策ではありますが、自由度が低く、柔軟な資産活用が難しいという側面もあります。

こうした事態を防ぐためには、元気なうちからの対策が不可欠です。代表的な方法として、以下のようなものがあります。

●家族信託
あらかじめ家族に財産管理を任せることができる仕組み。認知症になった後も、契約に基づいて柔軟に資産を使うことが可能です。

●任意後見制度
将来、判断能力が低下した場合に備えて、あらかじめ後見人を自分で指定しておく制度。ただし、後見人として収支を記録として残しておかねばならない義務があり、煩雑さがあります。

●生命保険の活用
指定代理請求人を設定することで、介護が必要になった際に迅速な現金確保が可能に。現金化のスピードという点で有効な手段です。

このような手段があるので、それぞれの方法にどんな特徴があり、状況に合わせて活用を検討しましょう。

ただし、これらに共通するのは、「判断能力があるうちにしかできない」という点です。認知症になってからでは、できる対策は大きく制限されてしまいますので、「まだ早い」と考えているうちに対策しておく必要があります。

高齢期のお金は「いかに必要なときに使える状態にしておくか」が重要

「お金がある=安心」とは限りません。今回のケースのように、資産があっても使えなければ意味を成さないのです。

特に高齢期においては、「いかに資産を守るか」と同時に、「いかに必要なときに使える状態にしておくか」が重要になります。資産の額だけでなく使える仕組みも重要なのです。

認知、判断能力が確実に衰える高齢期においては、このような問題があることはあらかじめ理解しておかねばなりません。若くしてこのような状態になってしまう可能性もありますので「使える仕組み」も意識しつつ資産形成、資産運用のプランを構築しましょう。

小川 洋平
FP相談ねっと