「これだけ資産があれば老後は安心。家族に迷惑をかけることもないだろう」――このように考えている人は少なくありません。しかし実際には、「資産があるのに使えない」という事態に陥るケースも存在します。本記事では、ファイナンシャルプランナーの小川洋平氏が、金融資産1億円を超える資産家にもかかわらず、その資産を使えずに家族が大きな壁に直面した事例をもとに、「老後資産管理」の落とし穴を考えます。
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「父さん、高級老人ホームに入れてあげるからね」息子の願い、叶わず…資産1億円超を持つ82歳元役員が「グループホーム」で暮らす理由【CFPが解説】
成年後見制度の裏側にある「不自由な現実」
父の資産を動かせない状況に追い込まれた健一さんは、成年後見の申立てを行いました。成年後見制度とは、認知症などで判断能力が低下した人に代わり、財産管理や契約行為を行う人(後見人)を選任する制度です。父である我妻さんが認知症になってしまった以上、その財産を動かすためには、それしか方法がなかったからです。
申立て後、家庭裁判所が選任したのは、弁護士でした。ここで、第二の問題が発生します。
健一さんが考えていた「できるだけ環境の良い高級老人ホームに入れてあげたい」という願いを、後見人である弁護士は認めませんでした。その理由は、成年後見制度の目的にあります。
後見人の役割は「本人の財産を守ること」であり、過度に高額な支出は原則として認められません。特に、高級老人ホームのように費用が高額な施設については、「本人の生活レベルや必要性と比べて妥当かどうか」が厳しく判断されます。つまり、「資産があるから使っていい」ではなく「本人の利益に照らして必要かどうか」が基準になるのです。
結果として、健一さんの希望は却下され、父は複数の施設を転々とした後、最終的に自宅から車で30分ほどのグループホームへ入居することになりました。
決して、その施設が悪いわけでも不満を抱いているわけでもありません。ですが、「お金はあるのに、思うように使えないなんて」……その現実に、健一さんは強い違和感を覚えたのでした。