老後資金は「2,000万円必要」「5,000万円あれば安心」――など考えていませんか。多くの人が“なんとなくの目安”で老後資金の準備を進めていますが、その金額は何歳までの生活を前提にしているのでしょうか? 長生きしたことで老後資金が尽き、子ども世代に大きな負担がのしかかる場合もあります。90代の母と65歳の息子が直面した事例から、「長生きリスク」と備え方について、CFPの伊藤寛子氏が詳しく解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
長生きなんてしたくなかった…詫びる94歳母に、沈黙する65歳息子。年金月13万円・残高1,000万円で“一生足りる計算”が、12年で枯渇した理由【CFPの解説】
82歳を過ぎた頃、状況は一変…10年後「貯蓄枯渇」が現実に
82歳を過ぎた頃、和子さんは膝を悪くし、外出にはタクシーが欠かせなくなりました。通院回数も増え、医療費や交通費がかさむようになりました。さらに、日常生活の負担も増えたことで、デイサービスや家事支援サービスを利用するようになり、介護費もかかるようになりました。
その結果、生活費は月20万円まで増え、毎月の赤字は月7万円、年間では約84万円に膨らみました。これにより、資産の減り方は一気に加速しました。
・85歳時点:約800万円
・90歳時点:約200万円
母が92歳を迎えた年、ついに貯蓄はほぼ底をつきました。
もし母が90歳で亡くなっていたなら、資産は残っていたかもしれませんが、母は今も元気に生きています。長年暮らしてきた自宅での生活を望んでいた和子さんでしたが、そのままでは立ち行かなくなってしまうことから、康介さんと同居することに。現在は、生活費や介護費用の不足分を康介さんが補っています。
しかし、康介さん自身もすでに65歳です。定年後も再雇用として働いていますが、現役時代に比べて年収は4割近く減少しました。それでも、夫婦共働きで家をあける時間も長く、母親のサポートに必要な介護費用を削ることはできません。
「母の面倒を見るのは当然だと思っています。ただ、自分たちの老後もあるので、正直なところ不安もあります」