長年の我慢に終止符を打ち、ようやく手に入れた「ひとりの自由」。その決断のきっかけは、17年間ともに生きた愛犬の死でした。貯蓄に年金分割、実家の存在――「これだけあれば大丈夫」と信じた前提が、離婚から2年後、65歳で年金の通知が届いた日に一つひとつ崩れていきます。感情が後押しした選択の先、数字が突きつけた現実とは? FPの三原由紀氏が詳しく解説します。
年金振込通知書を二度見しました…65歳専業主婦、〈年金月9万円〉に衝撃。無関心夫との離婚で手に入れた「自由」の現実【FPの助言】
自由と生活は別問題…今からできる現実的な備え
陽子さんのケースは、「離婚が間違いだった」という単純な話ではありません。ただはっきりしているのは、勢いで決断すると、後から「制度とのズレ」に苦しめられることがあるということ。感情が先走る場面でこそ、冷静に数字を確認することが欠かせないのです。
では、どのような点がポイントになるのでしょうか。
まず、老後は、思っている以上に「固定費」の影響が大きくなります。特に住まいは、生活の安定を左右する大きな要素です。民間賃貸だけでなく、公営住宅などの選択肢を含めて検討することで、毎月の負担を抑えられる可能性があります。
また、大きな決断の前に確認しておきたいのが、年金分割で対象となる期間の範囲と、離婚した場合・しなかった場合それぞれの年金額の試算です。特に遺族年金については、当然ながら、離婚後は受け取れません。これらは年金事務所に相談することで、事前に把握することができます。
妻から離婚を切り出された夫にとっても、年金分割は無関係ではありません。離婚によって、自分の将来の年金額が変わりうることを、十分に意識している人は多くありません。
さらに、月数万円でも収入を得る手段があれば、家計は大きく変わります。経験を活かしたパート就労なども選択肢の一つです。
老後の選択に正解はありません。ただ、「なんとかなるはず」という前提が、本当に現実に合っているのかは、一度立ち止まって確かめる価値があります。
「自由になれるはずだった」――その選択は、生活と両立できるものでしょうか。
老後の生活は、制度と数字の上に成り立っています。妻にとっても、夫にとっても、離婚は年金という土台を揺るがす選択です。感情が動く前に、その選択がこれからの暮らしにどう影響するのか。一度、ご自身の状況を数字で確かめてみませんか。
三原 由紀
プレ定年専門FP®