二世帯住宅は親世帯と子世帯の距離が近いだけに、複雑な感情を抱きやすいもの。同居してくれた嫁や孫を気遣うばかりに自分の晩年の人生を謳歌できずに後悔する姑や、二世帯住宅の“うまみ”を狙ってあぐらをかく嫁もいるようで――。事例をもとに、「二世帯住宅」で起きがちな相続トラブルをみていきましょう。
母を思うと悔しくて…嫁と孫に尽くし続けた78歳母の死を悼む50歳長女。「この家は私たちのもの」と主張する長男の嫁に淡々と伝えた“当然の代償”【CFPが解説】
長年の疲弊の末…
日は流れ、孫たちも大学生と高校生になりました。「やっと自分の時間が持てる」と思っていた矢先、サワコさんの夫(享年76歳)が急逝。悲しみに暮れるサワコさんでしたが、チナミさんや孫たちからは、あまり悲しそうな素振りが見えません。
「不満ひとつ言わずにあんたたちを育ててきたのに、その態度はあんまりだ」
深い悲しみと長年の疲れが重なったのか、長年の持病が悪化。サワコさんも夫の後を追うように、静かに息を引き取ったそうです。
長男の嫁・チナミさんが直面した現実
サワコさんの法定相続人は、長男のコウジさんと、結婚して遠方に暮らす長女のミワさん(仮名・50歳)の2人。遺産は、二世帯住宅のうちサワコさん名義となっている不動産(建物の1階部分)と1,500万円の預金で、遺言書はありませんでした。
葬儀から1ヵ月後。2人は遺産相続の話し合いのため、長男宅である二世帯住宅に集まりました。
「遺産はきっちり半分でいいよね?」
長女ミワさんの言葉を聞いて、コウジさんより先に口を開いたのは妻のチナミさんでした。
「ちょっと待ってください。半分といっても、この家は私たちのものですよね?」
「いいえ、母の遺産はきっちり折半したいの」
ミワさんは一切譲りません。毅然とした態度でチナミさんと対峙するミワさんには、ある決意がありました。
「報われないまま亡くなった母を思うと悔しくて……弟夫婦の思惑通りにはしたくなかったんです」
実はミワさんは、疲弊しきった晩年の母の姿を知っていたため、チナミさんに対してうっすらと憎しみを抱いていたといいます。
「どうしてもこの家を相続したいのなら、代償金を払ってもらいます」
「え、代償金?」
「代償金」とは、不動産のように分割できない財産を相続した人が、他の相続人に対して代わりに支払う金銭のこと。チナミさんは、義理の両親が亡くなればこの家は当然自分たちのものになると思っていたため、ミワさんの主張に愕然とします。
売却して現金で分ければ、自分たちの住む場所がなくなる。しかし、代償金を支払わずに共有名義にすると、将来の売却や修繕で必ず揉めることが目に見えている――。
いずれにしても不利になる現実を前に、チナミさんは言葉を失いました。