穏やかな「遺産分割協議」を破壊した「兄嫁」のひと言

「この家は兄さんが継いだら? 私は現金を半分もらえれば十分」

父・昭さん(仮名・享年82歳)の葬儀から数日後。四十九日も待たずに始まった遺産分割協議の場で、長女の智世さん(仮名・48歳)は、2歳年上の兄・俊彦さん(仮名・50歳)に穏やかな表情でこう言いました。

昭さんがのこした財産は、郊外にある築45年の自宅(評価額約3,000万円)と、預貯金1,400万円の、あわせて4,400万円です。母は数年前に他界しているため、相続人は兄と智世さんの2人だけ。遺言書はなく、法定相続分で公平に分けるならそれぞれ2,200万円相当を取得することになります。

しかし智世さんは、生前「この家は長男が守れ」と繰り返していた父の気持ちを尊重したいと考えていました。

「私は嫁に出た身だし、兄さんが家を継ぐのが自然だと思う。お父さんもそう望んでたし……私は現金だけでいいよ」

「え、本当にいいのか? お前がそこまで言うなら、ありがたくそうするよ。でも、継ぐって決めた以上、大切に守っていかなきゃな」

妹からの申し出に、俊彦さんは驚きながらも感謝。話し合いは円満に終わるかに見えました。しかし次の瞬間、傍らで黙って聞いていた俊彦さんの妻・幸恵さん(仮名・48歳)が声を上げます。

「ちょっと待って! 家を守っていくって……まさか、私たちがここに住むってこと?」

俊彦さんは戸惑いながら答えました。

「まあ、今すぐではないけど……いずれはな。親父も望んでたし、智世もこう言ってくれてるし」

実は、母が亡くなってからというもの、実家に住んでいたのは父・昭さんただ1人。智世さんは遠方に暮らしており、俊彦さん・幸恵さん夫婦は車で30分ほどの距離にあるマンションに暮らしています。

夫婦で話し合っていたときは「実家ももう古いし、父が亡くなったあとは家を売却する」と話していたこともあり、「家を継ぐ」という話は幸恵さんにとって寝耳に水です。