「年金が少なくて生活はギリギリ」。そんな切実な声を聞くことは少なくありません。しかし、受け取れるはずの年金を見逃し、知らないうちに数百万円単位を失っている。そんなケースがあるのをご存じでしょうか。「知らなければ一生もらえないまま」――年金で損をしないためには、知識を持つことが重要です。今回は、年下妻の老齢年金の請求を機に「加給年金の請求もれ」に気づいた70代男性の事例から、制度を知る方法などについてCFPの松田聡子氏が解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
「ねんきん定期便」にも載ってない?嘘だろ…気づかぬうちに「約200万円」をもらい損ねていた75歳夫、年金事務所の窓口でしばし絶句【CFPが「年金の落とし穴」を解説】
なぜ「気づけない」のか——加給年金が見落とされる理由
加給年金は厚生年金の加入者が65歳になったとき、生計を維持している配偶者や子がいる場合に老齢厚生年金に上乗せして受け取れる年金です。受給できるのは、厚生年金の加入期間が20年以上の人です。また、加給年金の対象が配偶者の場合、65歳未満であることが条件となります。
達夫さんの厚生年金の加入期間は20年を大きく超えており、達夫さんが65歳のとき、伸枝さんは55歳。要件を満たしていました。
達夫さんのような見落としは、決して珍しいケースではありません。加給年金はなぜ見落とされやすいのでしょうか。
まず大きいのが、ねんきん定期便に加給年金が記載されないという点です。毎年誕生月に届くねんきん定期便を見て、「このほかに加給年金がもらえる」とわかっている人ばかりではありません。
日本年金機構は個人の年金加入記録は把握できても、その人の家族構成までは考慮していません。ねんきん定期便の金額はあくまで本人分のみで、家族の状況によって大きく変わる加給年金は定期便に反映させられないのです。つまり、「ねんきん定期便の金額がすべて」ではない可能性を知っておく必要があります。
また、情報不足による見落としも挙げられます。年金事務所からの通知や案内が届いても、その内容を理解できずに放置してしまうケースも考えられるでしょう。
そして達夫さんのように、「妻はパートをしているから対象外では」という思い込みも重なりやすいといえます。
加給年金は年齢差が大きいほど受給期間は長くなり、総受取額は増えます。しかし、老齢年金と同じ申請主義の制度です。知っている人だけが申請し、知らなければ一生もらえないまま終わってしまうのです。