神奈川県の「葉山」と聞いて、どのようなイメージを思い浮かべますか? 皇室の別邸である「葉山御用邸」をはじめ、「高級別荘地としてのイメージが強い」という人も多いのではないでしょうか。では、実際のところ葉山はどのような町で、どんな人が住んでいるのか、経営コンサルタントの鈴木健二郎氏が、住民の声を交えながら「葉山の実態」を解説します。
飲食店店主「観光客より、地元の常連が安心」…住民の平均所得は10年で122万円増加〈神奈川県・葉山〉の実態【取材】
葉山のなかで「ヒエラルキー」が存在する?
地元の不動産仲介業者はこう語る。
「葉山の人はプライドが高い。でもそれを外に向かって誇示しない。“わかる人だけがわかればいい”という感覚なんです」
よく「葉山のなかにもヒエラルキーがある」と言われる。海沿いエリア、別荘地、内陸部。しかし実際には、統計上の所得分布は極端に分かれているようなことはなく、町全体が底上げされているのが実態だ。
ここが鎌倉との微妙な違いである。鎌倉は文化遺産を武器にした観光都市としてのブランドが強いのだが、葉山は生活都市としてのブランドを磨き、これを内向きに深めている。葉山の無形資産とは、その「静かな品格の一貫性」といって良いだろう。
「成長を抑制する」という戦略
葉山の昼間人口は約78%。この点は鎌倉と同じ傾向で、多くが都心へ通勤するベッドタウン型といえるだろう。しかし、近年その質が変わってきているようだ。
「平日の昼間でもカフェにノートPCの人が増えました」
地元飲食店の店主がそう語るように、葉山は単なる通勤地から、リモートワーク層やスタートアップ経営者、士業、IT関連職などが選ぶ「半自立型居住地」へと進化していると考えられる。
さらに、葉山国際カンツリー倶楽部で始まった現地決済型ふるさと納税。既存の高付加価値資産にデジタル決済を組み合わせ、消費を町内で完結させる仕組みだ。
大規模開発は行わない。観光客を大量誘致しない。再開発で街並みを変えない。これは経営戦略で言えば、「プレミアム・ニッチ型」に似たスタイルだ。つまり、
□拡張よりも維持
□回転率よりも単価
□集客よりも定着
このように観光化しすぎないことで、むしろ競争優位を守る。つまり“成長を抑制することで持続性を高める”という、成熟社会型戦略を選択しているのである。
爆発的成長を捨てることで、長期安定を選んだ町と言ってもよいだろう。
成熟社会における“落ちない設計思想”
高度成長期は、拡張こそが正義だった。だが人口減少時代は、いかに価値を摩耗させないかが問われる。葉山は資産の“希少性管理”は徹底しており、その点でも秀逸だ。
□景観を守る
□大規模商業化を避ける
□地元常連消費を重視する
□ブランドを乱発しない