不動産が絡む相続は、預金だけの相続と比べて公平に分割しにくいことから、トラブルに発展するリスクが高いといわれています。もっとも、相続人同士がきちんとコミュニケーションをとれていれば、たとえ遺言書がなくても円満な相続になるでしょう。しかしなかには、相続人ではない“第三者”が円満にまとまりかけた話し合いを“台無し”にしてしまうことも……。事例をもとに、不動産が絡む相続の注意点をみていきましょう。
ちょっと待って!…父の遺産「評価額3,000万円の実家」と「預金1,400万円」を巡って50歳兄と48歳妹が話し合い→円満にまとまりかけたその時、協議を遮った“第三者”の声
兄嫁・幸恵さんが激怒したワケ
「冗談じゃないわ。維持費のこと、ちゃんと考えているの? 瓦屋根は修繕に200万円かかるって言ってたでしょう。外壁だってあちこちひび割れてるし、10年も経てば建て替えと同じくらいのリフォームが必要になるに決まってる。固定資産税や火災保険だって毎年かかるのに、現金たった700万円でこんな古い家を押しつけられるなんて、割に合わない!」
「義姉さん、そんな言い方ないでしょう。私はよかれと思って、大切な実家を譲るって言っているのに……」
激昂する妻と涙を浮かべる妹を前に、俊彦さんは茫然と立ち尽くすことしかできませんでした。
兄妹の思いやりで穏やかに進むはずだった相続は、配偶者が示した「家計の現実」によって、一気に暗雲が立ち込めてしまいました。
実子と配偶者で食い違う「実家」への価値観
実家は、実子にとっては親から託された「愛情の象徴」であっても、配偶者から見れば「築古の不動産」です。
幸恵さんが言うように、手元に残る現金が少ない状態で引き受ければ、家計全体のキャッシュフローを圧迫する可能性が高いでしょう。さらに、実際に住むとなれば、老朽化によるトラブルへの対応や日々の管理といった負担が、同居する配偶者にも長期的にのしかかります。
感情を優先する実子と、生活の維持を最優先する配偶者……この「家」への価値観の違いは、しばしば相続人のあいだで激しい反発を生みます。
法的には、「相続人の配偶者」は相続人には含まれず、遺産分割協議に参加する権限もありません。しかし、家計を共にする存在である以上、その存在や影響力を無視することはできないでしょう。
“築古実家”を相続する前に…講じておきたい3つの対策
古い実家を相続する場合には、以下のような対策が欠かせません。
1.修繕・維持コストの「可視化」
屋根や水回り、外壁などといった主要部分について、10年単位でどれくらいの支出が見込まれるのかを試算し、数字で把握します。客観的なデータがあれば、感情に流されず冷静で建設的な話し合いが可能です。