住宅購入資金の援助をめぐる金銭トラブル

「お金を返してくれないか」

とある地方都市に住むケンイチさん(仮名/72歳)。妻のヨウコさん(仮名/70歳)と、年金月26万円で暮らしています。慎ましくも平穏な老後……のはずでした。

しかし現在、ケンイチさんは実の息子を相手に、金銭トラブルの泥沼に足を踏み入れています。

きっかけは5年前、愛するひとり息子・ダイキさん(39歳)からの“おねだり”でした。

「そろそろ家を建てようと思うんだ。二世帯も視野に入れて広い土地を探すから、父さんたちも少し援助してくれない? 将来は一緒に住んで、にぎやかに暮らそうよ」

「一緒に住んで」――その言葉に、ケンイチさん夫婦は舞い上がったといいます。

「かわいい盛りの孫と一緒に暮らせるなら」と、老後資金から虎の子の1,000万円を拠出。

「これで二世帯住宅の頭金にしなさい」と、ダイキさんの口座に振り込みました。

ついに息子の新居が完成…両親が抱いた“違和感”

しかし、完成した新居にお祝いに行くと、そこに“自分たちのため”と思しき部屋はありませんでした。

「子どもがまだ小さいから、物置に使っているんだ。落ち着いたらリフォームするつもりだし、安心してよ」

息子のその言葉を信じ、二人は古い自宅に戻りました。

5年後…夫婦の決断

それから約5年――相変わらず、同居の話は一向に進みません。それどころか、息子夫婦が孫を連れて遊びに来ることも減りました。

そのようななか、ケンイチさんの自宅で雨漏りが発生し、修繕費が必要になります。

老後資金の減少に不安を覚えたケンイチさんは、意を決して息子に電話をかけることに。

「同居の話が進まないなら、あの時の1,000万円を返してくれないか。家の修理代にしたいんだ」

“耳を疑う”息子の返答

受話器の向こうのダイキさんの声は、氷のように冷たいものでした。

「は? あれは贈与でしょ? いまさら返せだなんて、それはないんじゃない。こっちだって教育費でカツカツなんだよ」

「贈与だって!? 同居が前提だったはずだ!」

「そんな契約書、どこにあるんだよ。もういい? ちょっと忙しいから切るね」

こうして電話は一方的に切られてしまいました。

口約束だけで渡した大金。愛する息子に裏切られた絶望感と、迫りくる生活不安……。ケンイチさん夫婦は、息子への住宅購入費用として渡した1,000万円を取り返すことはできるのでしょうか。