一般社団法人不動産流通経営協会「不動産流通業に関する消費者動向調査」によると、住宅を購入する際、約14.2%の世帯が親から資金援助を受けるそうです。また、30代ではその割合が20%を超えるといいます。こうしたなか、住宅購入資金という大金をめぐりトラブルに発展する親子も少なくありません。資金援助の“見返り”を求める親が悪いのか、親への感謝が欠けている子が悪いのか……具体的なトラブル事例をみていきましょう。
年金月26万円の70代夫婦、愛する息子に〈住宅購入費1,000万円〉を援助。息子からの「一緒に住もう」を待ち続けて5年…夫婦が下した「苦渋の決断」【弁護士が警告】
弁護士の回答
今回紹介したケースについて、親子間のやり取りとしては自然な流れですが、法的に見ると両親の立場は極めて厳しいと言わざるを得ません。
ケンイチさん夫婦の認識としては「同居を前提とした条件付きの贈与」だったのでしょう。
しかし、条件付き贈与は、条件が成就しなかった場合の返還について明確な合意や書面がなければ、法的に認められにくい不安定な構成です。本件のように書面が存在しない場合、通常は親から子への単純な贈与と評価され、裁判で返還を求めることは容易ではありません。
ケンイチさん夫婦はどうすればよかったのか
今回の場合、贈与ではなく「貸付」として借用書を作成し、同居が実現しない場合には返済する旨を明確に定めた金銭消費貸借契約(※)を締結しておくべきでした。
(※)法的には、「同居が実現しない場合」といった条件付けにするのではなく、「同居できるかどうかが決まる時期を返済期限」とした金銭消費貸借契約を締結しておくほうが安定性が高い。
その形であれば、裁判所を通じて返済義務を認めてもらえる可能性は格段に高まったと考えられます。
ケンイチさん夫婦は、息子に「この1,000万円は自宅のリフォーム資金だが、同居できるなら不要になるから援助する。状況が変わって同居できないとリフォームに必要だから、あくまで貸付の形をとる」などと伝えておくべきでした。
親子間の資金援助は、「子どもが喜ぶ顔を見たい」「細かいことを言って嫌われたくない」といった思いから、きちんと契約書を作成しているケースは多くありません。しかし、この手間を怠ることで、最悪の場合「絶縁」にいたるほど関係がこじれてしまうリスクがあるのです。
老後のために必要なお金ならば、子どもに対しても、贈与なのか貸付なのか前提を説明しておくべきだったといえるでしょう。
山村 暢彦
弁護士法人 山村法律事務所
代表弁護士