思わず絶句…義母の「耳を疑う一言」

「もしもし? あ、やっと出た。ミナコさん、何度か電話したんだけど」
「……すみません、このところ残業続きで帰りが遅かったもので」

電話口で義母の声を聞いた瞬間、ミナコさんは嫌な予感がしました。これまでも、ひとり息子のカズキさんを溺愛する義母の言動に辟易してきたミナコさん。子どもを持たないことを告げたときの態度や発言は、いまでもミナコさんの深い心の傷になっていました。

そんな義母からの電話。正直、連絡があってうれしい相手ではありません。

「あの、ご用件は……」

恐る恐るミナコさんが尋ねると、義母は言いました。

「あなた、その家出て行ってくれない?」

耳を疑う一言に、思わず言葉を失うミナコさん。義母は畳みかけるように続けます。

「あなたたちに子どもがいないから、私にもカズキの遺産を相続する権利があるんだって。知り合いが教えてくれたのよ。家探し大変だと思うけど、頑張ってちょうだいね」

突然の主張に、ミナコさんはなにを言われているのかすぐに理解することができませんでした。

「子のない夫婦」の遺産は誰のもの? 

死亡した人に配偶者と子どもがいる場合、法定相続人は「配偶者」と「子ども」であり、父母には相続権がありません。しかし、子どもがいない場合には、直系尊属(父母・祖父母)や兄弟姉妹が、配偶者とともに法定相続人となります。

子がいない人の財産の相続順位と法定相続割合は次のとおりです。

第1位……配偶者+死亡した人の直系尊属(父母・祖父母のうち近い世代)

相続割合:配偶者3分の2、直系尊属3分の1

第2位……配偶者+死亡した人の兄弟姉妹

相続割合:配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1(兄弟姉妹がすでに死亡している場合は、その子どもが代襲相続となる)

つまり、子のいないカズキさんの遺産は、母親にも3分の1の相続権があるのです。マンション購入時に預金のほとんどを頭金として使ってしまったため、遺産と呼べるものはミナコさんがいま住んでいるマンションだけでした。

そのため、このマンションは「遺産分割協議」の対象となり、ミナコさんの判断だけで名義を変更することはできない――その事実を、義母からの電話でミナコさんは初めて知ったのです。