マンションにとって「大規模修繕」は必要不可欠であり、その費用は住民が毎月納める「修繕積立金」と「管理費」から捻出されます。ただ、住民(管理組合)には専門知識がない場合が多いため、工事の内容や予算、仕上がりについて、住民側は施工業者の説明を信じるしかありません。こうした背景から、大規模修繕をめぐるさまざまなトラブルが発生しているようです。1級建築士・建山晃氏の著書『[新装版]マンションの大規模修繕でダマされない方法』(彩図社)より、実際のトラブル事例を紹介します。
マンション大規模修繕トラブルの実態…工事後に漏水も「工事は問題ない」と突っぱねる施工会社の言い分【1級建築士が警鐘】
全国規模で発生している「大規模修繕」トラブル
区分所有者であるマンションの住民は、毎月「修繕積立金」と「管理費」を納めている。修繕積立金は将来の建物の維持のために使われ、管理費は日々のマンション管理に使われる。
管理会社は全国に1,934社(2021年国交省資料)あるとされている。毎月1万円の管理費とすれば、修繕積立金と同様に大変な事業規模となる。一度管理組合と契約してしまえば、後は何をせずとも間違いなく毎月お金が入ってくるため、管理会社にとって安定した収入源になっているのだ。
そのため、修繕積立金と管理費をめぐってはさまざまなトラブルが全国規模で発生している。その例を見てみよう。
改修サッシからの雨漏り
次の例は、和解になったため詳細は書けないが事実である。
20××年にある地方の集合住宅で、補助金を利用してサッシと玄関を交換する大規模修繕工事が行われた。工事の終了後に台風が来て、一部の住宅にサッシからの漏水が見られた。管理組合は施工不良ではないかと施工会社に改善を求めたが、施工会社からは「工事には問題がなく、今回は想定外の台風であり、サッシの性能には問題がない」との回答が来た。
その後も強風が吹くと漏水は止まることがなく、その都度施工会社と当時担当したコンサル会社に問題の解決を依頼した。しかし、コンサルに技術者(1級建築士)はいたもののサッシの構造までは把握できず、施工会社の見解を述べるだけだった。
そこで管理組合は、マンションで加入している保険会社の鑑定人による調査を依頼した。この鑑定人は1級建築士の資格を持っていた。鑑定人は、住民と協力(サッシの分解など)して現場検証を行った。
鑑定結果は施工不良(詳細は省く)との判断であり、管理組合は裁判も辞さない構えで施工会社に全箇所の取り替えを求めた。
結局「PL法(製造物責任法)に基づいてその責任で直せば保険から工事金が捻出できる」と提案して和解となり、すべてのサッシの取り替え費と調査費が保険から払われることになった。